
開幕を4日後に控えた博多から、衝撃のニュースが発信された。ホークス担当の番記者たちのスマートフォンに、メール着信を告げるランプが点滅したのは、午後3時のことだった。
添付されていた球団からのプレスリリース。
表題は「川崎宗則選手の退団について」―。それは、川崎からの“お別れのメッセージ”でもあった。
<昨年の夏場以降からリハビリを続けてきましたが、同時に自律神経の病気にもなり、身体を動かすのを拒絶するようになってしまいました。このような状況で野球を続けるのは、今の自分には考えられません。悩んだ末、この度、ホークス球団と協議して自由契約という形で、野球から距離をおいてみようと決断しました。川崎宗則が元気でプレーする姿を楽しみに待っていてくれている皆様には、本当に申し訳ない決断ですが、今は環境を変えて、じっくりと心と体の回復につとめます。たくさんの皆さんに心配をかけたことを申し訳なく思っています。同時に、たくさんの皆さんに応援して頂いていることに心から感謝しています。本当にありがとうございます。川崎宗則>
昨季、メジャーのシカゴ・カブスから、6年ぶりに古巣・ソフトバンクへ復帰。貴重な戦力として、さらに、ベンチに明るさをもたらすムードメーカーとして、工藤公康監督にも重宝された36歳のベテランは、シーズン終盤に両アキレス腱を痛めて戦線離脱。クライマックスシリーズ、日本シリーズともに出場できず、以来、川崎の姿を表舞台で見ることがぷっつりと途絶えていた。
どうも、おかしい……。
周囲がざわつき出したのは、今年に入ってからのことだった。契約更改交渉の日程にも「川崎」の予定が一向に入らず、2月の宮崎キャンプにも「不参加」が球団から発表された。
諸説紛々。あらゆる噂が飛び交った。
入院しているらしい。
イチローに付いて、米国で練習しているらしい。
病気で激やせして、外にも出られないらしい。
メジャー復帰を目指して待っているらしい。
ただ、どれもこれも、本人発の話ではなかった。2月の宮崎キャンプで、川崎の動向に関して複数の球団関係者に尋ねてみたが、一様に口が重い。ホークスの情報には精通している地元のTV局関係者らも「いい話は、あまり聞かない」と首を捻るばかりだった。