そして、スタッフロールが流れて「ほんとのうたばん」のスタジオパートが終わり、最後の歌のコーナーが始まった。とんねるずの2人がバックバンドを従えて『情けねえ』を歌い上げた。この曲は、1991年にとんねるずが初めての『NHK紅白歌合戦』出場を果たしたときの思い出の一曲である。
秋元康によるこの曲の歌詞には、湾岸戦争時の日本を風刺する意味が込められていると言われている。ただ、「この世のすべてはパロディなのか?」というフレーズは、すべてをパロディのネタにしてきたとんねるずやこの番組の歴史を象徴しているようにも思えるし、「みんな時代のせいだと言い訳なんかするなよ」というのも、現代のバラエティ番組の制作者を鼓舞するようなメッセージであるようにも聞こえてくる。
そうやって歌詞を読み解くのはこちらの勝手な思い込みではないと思う。なぜなら、サビの部分の「この国を」「滅ぼすなよ」という歌詞は「バラエティを」「滅ぼすなよ」に変えられ、「この国を」「おちょくるな」という歌詞は「フジテレビを」「おちょくるなよ」に変えられていたからだ。フジテレビのバラエティ番組の黄金期を支えてきた2人が、フジテレビとバラエティ業界に惜別のメッセージを捧げる形になっていた。