テレビ局入社は1991年。それから報道に約20年携わってきた。そこで得た取材のノウハウは、執筆上もプラスに働いている。4年間のモスクワ特派員のほか、文部科学省など官庁の担当、警視庁記者クラブでは公安担当など、様々な取材を経験してきた。

「もちろんテレビマンとして取材したことをそのまま作品に書いたりはしません。ただ、報道にいたからこそ肌で感じた様々な内情やディテール、問題意識は、形を変えて作品に生かされていると感じます」

 だが、多忙を極めるであろうテレビ局勤務の傍ら、いったいどう時間を捻出しているのだろう。

「土日にドトールや図書館で書いたり、平日の朝、出勤する前に、会社の近くのマックで書いたりしていますね。あとはいいアイデアが浮かんだら、すぐに喋ってスマートフォンにメモしておく。それを時間のあるときに、文章にしていきます」

 スケール感の大きな小説を生み出したのは、意外にも“スマホ”。平日も忙しいサラリーマン作家の、強力な相棒でもある。

「スマホで書けるのは便利ですね。隙間時間を使って原稿用紙1枚分くらい書いたり、土日なら25枚くらい。書くのは早い方だと思うんですが、今回は直しにより時間をかけて、読者の方に楽しんでもらえる小説を目指しました。日常を忘れて物語に没頭していただけたら、それにまさる喜びはありません」

(西山奈々子)

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