スリーアウトチェンジのはずが、思わぬどんでん返しで試合の流れが変わってしまったのが、1998年7月15日の巨人vs横浜(横浜)。序盤に7対0と一方的にリードした巨人だったが、横浜のマシンガン打線が火を噴き、7回を終わって9対9の大乱戦。8回表、巨人は高橋由伸の右越え3ランで12対9と勝ち越し。これで勝負あったかに思われた。長嶋茂雄監督はその裏、満を持して守護神・槙原寛己を投入した。
槙原は4番・ローズのタイムリーで1点を失ったものの、2死一塁で6番・佐伯貴弘を右直に打ち取った。ところが、これでスリーアウトと思われた直後、「セットポジションで止まっていなかった」と槙原にボークが宣告され、カウント1-2から打ち直しという珍事に。
そして、まるでドラマでも見ているかのように、佐伯は8球目を右翼スタンドに起死回生の同点2ラン。この一発で流れは変わり、横浜は9回、波留敏夫が槙原から中越えタイムリーを放ち、劇的なサヨナラ勝ちを収めた。
同年、横浜は38年ぶりのリーグ優勝&日本一に輝いたが、Vへの大きな布石となった神がかり的な試合として懐かしく思い出すベイファンも多いことだろう。(文・久保田龍雄)
●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。