大腸内視鏡検査の際に「憩室がありますが心配ありません」と言われたことがないだろうか。大腸憩室症(だいちょうけいしつしょう)は、腸壁内側の粘膜が、外側に向かい袋状に飛び出すものだ。出血や炎症を起こすと治療が必要になり、罹患率は国民の10人に1人ともいわれている。
 大腸壁は内側から粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜(しょうまく)でできている。筋層は筋肉でできた強固な組織だが、腸管に酸素と栄養を送る血管(動脈)が貫いている部分だけは筋肉がない。そのため、腸壁に高い内圧がかかると、その部分から外に向かって粘膜が袋状に飛び出してしまう。これが憩室になる。粘膜が膨らんでできた憩室の壁は弱く、動脈が存在するので出血しやすい。
 大腸憩室症は大腸内視鏡検査で偶然みつかることがほとんどだ。無症状で悪性化することがないので、普通は放置していてもよく、病状が出たときに治療する。しかし、突然大出血する例も少なくないという。
 大腸憩室症で注意が必要なのは、炎症を起こす場合だ。発熱や腹痛をともなうことが多い。軽症なら抗生物質の投与で改善することもある。しかし炎症を見過ごしたり、我慢したりしていると、憩室に穴が開く穿孔(せんこう)を起こしてしまう。こうなると膿や大腸内の便が腹膜に漏れ出し、腹膜炎を起こす。
 四日市社会保険病院副院長・大腸肛門病センター長の梅枝覚(うめがえさとる)医師は、こう話す。
「穿孔になると緊急手術が必要になります。腹膜炎を起こすと、患部を切除したあと腸を縫い合わせても、うまくくっつかない縫合不全を起こす確立が高くなります。」
 大腸憩室症の大きな要因は加齢と食生活だが、梅枝医師はストレスとの関連も無視できないと言う。
「憩室は腸壁が緊張して内圧が高まると発生します。ストレスや過労などで下痢を起こしていたり、過敏性腸症候群などをもっていたりする人が40代、50代になってくると、憩室ができやすくなってきますね」

※週刊朝日 2012年9月28日号

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