東京都が昨年示した条例案では30平方メートル以下のスナックやバー以外の飲食店は原則禁煙とするもので、分煙を認める時も従業員の反対があったら認めないなどという厳しい内容のものだった。

 そこまで準備したのだから急いで条例を制定するのかと思ったら、おそらく関連業界の反対が予想外に強いことを感じたのだろう。政府の法案との調整が必要という理由で条例案の提出をさらに先送りするということにしてしまった。

 政府の法案との調整などしていたら東京都の条例も骨抜きになるのは必至。最初からこうなるのはわかっていたのに、何を今さらという感じだ。

 おそらく、安倍政権の動きを見極めながら、自民よりは少し前向きという内容でお茶を濁すのか、世論が規制強化を求めて盛り上がるなら、それに乗って当初案で戦うのかを見極めているのではないだろうか。

 あるいは、このままさらに時間を空費して、「時間切れで、厳しい対策を実施するのは大混乱になるのでできません。こうなったのは、安倍政権の法案が出て来るのが遅くて混乱回避のための調整ができなかったからです」という言い訳で条例案を骨抜きにする作戦をとっているのかもしれない。

 如何にも姑息な印象だが、小池都知事のことだから、そんなこともないとは言えない。

●先進国になれない「利権至上主義国家」日本のリーダー
 
 このままでは、骨抜きの受動喫煙防止法案が国会に提出されることになる。

 現在、超党派の議員で、昨年の厚労省案に近い法案を提出しようという動きが出ているが、まだ少数派だ。

 世論がどこまで盛り上がるかが最大のポイントになりそうだが、大きな選挙のない年に結論を出す時期を持ってきた安倍総理の作戦勝ちになるのか。

 一方、超党派議連の最後の動きをにらみながら、小池知事がここで安倍政権と対峙する姿勢を示すのか。

 そして、安倍・小池両氏の姑息な人気取りと言い訳の手法がどんなものになるのか。
いずれにしても、日本の政府を代表する安倍晋三総理と首都を代表する小池百合子東京都知事はともにポピュリストとしての「姑息なテクニック」を競う展開になっているのが何とも情けない。

 いつになったら、日本は、真に「人にやさしい」先進国型のリーダーを見出すことができるのだろうか。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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