●昨年の法案提出先送りの言い訳に盟友切りで対応する安倍総理の姑息さ

 では、現在考えられている政府の受動喫煙防止法案はどれくらい骨抜きなのだろうか。

 IOCやWHOが求めているのは受動喫煙ゼロである。これは事実上「屋内完全禁煙」という意味だ。現在、日本で実施されている非常に緩やかな分煙は、WHOによる受動喫煙対策の評価では、4段階で一番下のグループである。

 これに対して、厚労省が昨年3月に示した対策は、床面積30平方メートル以下のバーやスナック以外は喫煙専用室を設ければそこだけは喫煙可とするが、それ以外は禁煙というものだった。この厚労省案でもWHOの評価では4段階の下から2番目に上がるに過ぎない。本来は完全禁煙にすべきなのだ。

 一方、自民党は、そもそも受動喫煙ゼロを目指すという原理原則を認めていない。昨年に示した対案は、面積100平方メートル以下の飲食店では、客も従業員も20歳未満を立ち入り禁止としたうえで「喫煙」「分煙」などの表示をすれば、喫煙を認めるというものだった。

 しかし、これでは、東京都で見れば、約85%が喫煙可となってしまうと批判を浴びた。

 ちょうどその頃、東京都の小池百合子知事が受動喫煙対策を7月の都議選の争点化を狙って公約に掲げた。

 秋の解散総選挙を思案していた安倍総理は、都議選と衆院選のことを考えて、評判が下がる骨抜き案を決めるのは得策ではないと考え、先送りを決断し。先送りすれば強い批判は起きない。安倍総理お得意の姑息なやり方だ。

 しかも、安倍政権が利権に負けたという批判を抑えるために、あろうことか、先送りの理由を安倍総理の盟友とも言われた塩崎恭久厚労相(当時)に人格的な問題があり、与党との調整が混乱に陥ったことだという情報を意図的に流していた。

●それでもなお続く姑息なお化粧作戦

 一方、今年は大きな選挙がない年だ。だから骨抜きだと思われてもかまわないということなのだろうが、それでもなお、最後まで姑息な「お化粧」で、少しでも自民党がこの問題に前向きだという印象を与えようとしているようだ。

 当初、厚労省は例外を認める飲食店の面積を150平方メートル以下に拡大するという方向性を打ち出した。この案では、東京都では約90%が例外になるというから非常に緩やかに見える。完全に利権に負けたということで、昨年の厚労省案からは大幅後退である。そして、骨抜き批判が出て来ると、面積の基準を100平方メートルに縮小すると言い出した。それだけ聞くと大幅に厳格化するように聞こえる。

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