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 よく「三振前のバカ当たり」と言われる。あわやホームランという大飛球を放ちながら、ファウルになった打者は、直後三振に倒れるパターンが多いからだ。

 ただし、原因を突き詰めると、大ファウルは甘い球を打ち損じた結果であることが多く、打者の技術的な問題と言えなくもない。内角球を引っ張って大ファウルを打った打者が、直後、外角球や緩い球でタイミングを外され、あっさり三振なんてシーンもよく見かける。だが、一流の打者には、このジンクスはほとんど関係ない。それを見事証明したのが、松田宣浩(ソフトバンク)である。

 6月27日の日本ハム戦(同)、通算200号まであと「1」に迫った松田は、2対0の4回無死一、二塁、フルカウントから高梨裕稔の6球目、内角フォークを鋭くとらえる。打球は快音とともに左翼ポール際へ。飛距離は十分だった。

 ところが、これでめでたく記録達成と思いきや、判定は無情にも「ファウル!」。工藤公康監督が抗議し、リプレー検証に持ち込まれたが、判定は変わらなかった。

「自分の中でめちゃめちゃいい形で打てたので、入ってほしかったですけど、ファウルになって残念……」とガッカリした松田だったが、「ガッツリ食らいつく気持ち」を失わず、プレー再開直後の高梨の7球目、外角フォークをフルスイング。今度は中堅テラス席中段に突き刺さる文句なしの一発。この瞬間、史上101人目の通算200本塁打が達成された。

「『三振前のバカ当たり』って、よく言うんですけど。まあ、次の球でホームランを打てたのも僕らしい」(松田)

 ジンクスなんてどこ吹く風とばかりに、大ファウルを“予告弾”に変えてしまったのは、やはり過去100人しかいない“選ばれた男”の証明と言えるだろう。

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 美馬学の自身初の二桁勝利がかかった9月19日の日本ハム戦(Koboパーク宮城)、楽天はもうひとつの記録達成もあと「1」とリーチがかかっていた。そして、この記録は序盤の2回に早々と達成される。

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