昨年の秋、このような形でロックに関して執筆する機会を与えていただいて以来、もともと細かく記録をとっておくような性格ではないのだが、何年の何月にこんなことがあった、あんなことがあった、などと立ち止まって振り返る時間が増えた。
たとえはクラプトンのニュースに触れれば、「そういえば、たしかあのとき」となったりするわけだ。で、今回、記憶の彼方から急浮上してきたのが、1993年1月12日、ロサンゼルスのセンチュリー・プラザ・ホテルで行なわれた第8回ロックンロール・ホール・オブ・フェイム・アニュアル・インダクション・ディナー。いわゆる「ロックの殿堂」の授賞パーティーだ。
25年前のあの日、エリック・クラプトンはクリームのメンバーとしてロック文化に対してはたした功績を讃えられている。「ティアーズ・イン・ヘヴン」とアルバム『アンプラグド』の驚異的な成功によってグラミー賞制覇の主要部門を独占することになる、直前のことだ。
幸運な偶然がいくつか重なってその豪華なパーティーの会場に潜り込むことができたのだが、おそらく大半は「まさかあり得ないだろう」と思っていたに違いない約1000人の出席者の前で、クラプトンはジャック・ブルース、ジンジャー・ベイカーとステージに立ち、「クロスローズ」「ボーン・アンダー・ア・バッド・サイン」「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」の3曲を聞かせてくれたのだった。
映像化もされたロイヤル・アルバート・ホールでの伝説的なフェアウェル・コンサートから25年目のことである。当然のことながら「クリーム再始動」への期待が高まったわけだが、いったん縺れた糸がそう簡単に元に戻ることはなかったようで、本格的なリユニオンまでにはさらに12年の歳月が必要だった。
その年、クリームとともにホール・オブ・フェィムに名を連ねることとなったのは、ドアーズ、クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、ヴァン・モリスン、ルース・ブラウン、エッタ・ジェイムスなど。ドアーズは、パール・ジャムのエディ・ヴェダーをヴォーカリストに迎えた編成であの時代を蘇らせ、欠席だったヴァン・モリスンに代わってカウンティング・クロウズのアダム・ドゥリッツが歌い、ルース・ブラウンのバックでボニー・レイットがギターを弾くなど、パーティーでのパフォーマンスは、時差ボケとカリフォルニア・ワインでフラフラになっていたとはいうものの、どれも感動的なものだった。