現在も沖縄に関わり続ける鳩山由紀夫元首相(撮影/西岡千史)
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「最低でも県外」──。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設問題で、鳩山由紀夫元首相が2009年の政権奪取前から語っていたこの公約が実現されることはなかった。当時、首相の一挙手一投足が外交と内政に混乱を生み、鳩山政権は約9カ月で崩壊。鳩山さんは12年の総選挙に出馬せず、政界を引退した。

 その鳩山さんがいま、沖縄にあるものを“誘致”するために精力的に活動をしているという。引退から5年、白髪が目立つようになった元首相に、2018年と沖縄への思いを語ってもらった。

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 鳩山さんの事務所は、今でも国会議事堂(東京都千代田区)近くのビルにある。入口の扉には「東アジア共同体研究所」と書かれたプレート。同研究所は鳩山さんが政界引退後に立ち上げたシンクタンクで、自ら理事長を務める。

 その鳩山さんがいま、力を入れているのが「麺」だという。日本にはうどん、そば、ラーメン……いろいろな麺料理があるが、鳩山さんの関心は日本だけにとどまらない。中国、韓国、タイ、ベトナムなど、アジア各国の名物麺料理について学び、年に1回は「アジア麺ロード」と題したイベントを那覇市で開いている。

 3回目となる今年は、11月26日に開催された。会場となった公園には、19の店舗が実際に8つの国と地域の麺料理を販売。午後には売り切れの店が続出し、過去最高となる約3千人(主催者発表)が集まった。

 それにしても、なぜ「麺」なのか? 鳩山さんに聞いてみた。

「東アジアの国々は、歴史的な背景もあって政治的に仲良くするのは難しい国が多い。それでも、文化はお互いに影響をしあっています。麺料理もその一つ。アジアにはいろんな麺料理があるけど、それぞれに個性がある。麺料理を通じて共通点を認め、違いを尊重しあえるきっかけになったらいいなと思ったんです」

 首相を経験し、沖縄への思いが人一倍強い元政治家としての思いもある。

「国と国が仲良くするのって、簡単ではありません。そんな時に、民間の人たちがお互いのことを理解していれば、政治がおかしくなったときに民間のエネルギーで政治を動かすことができるかもしれない。沖縄は、琉球王国時代から東アジアの文化が融合する地域でした。だからこそ、これからの時代の沖縄は『軍事の要』ではなく、『文化の要』となるべきです。まずは民間人同士が『食』から理解しあって、少しでも新しい時代に近づいてほしい」(鳩山さん)

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