ただ、ここで注目すべきは、彼らがメッセージ性の強い漫才を演じて、観客から拍手混じりの大きな笑いを取った、ということだ。安易な政治風刺ネタは、感心されることはあっても、笑いにつながることはない。日本人の国民性には馴染まないような政治色の強いネタで、若い世代の観客をきちんと満足させたのが何よりも評価すべきことだ。
中でも圧巻だったのは、漫才の結末部分。被災地の復興問題、沖縄の基地問題、北朝鮮のミサイル問題など、大事な問題はたくさんあるのに、ニュースで取り上げられるのは芸能人の不倫ネタばかり。本当に危機感を持つべきなのは「国民の意識の低さ」である、とビシッと言い切った。そして、村本は「お前たちのことだ!」と捨て台詞を残して舞台を去っていった。このオチの部分からは、村本が常日頃から人々に対して抱いている苛立ちのようなものがダイレクトに伝わってくる。
村本は、漫才や漫談において、自分の言いたいことを言って笑いを取ることを信条としている。自分の頭で考え、自分の体で感じたことでなければ、他人の心を動かすことはできないからだ。