ところが、そのような芸風を続けていると、業界内では反感を買うことも多い。同業者から「アイツはトガっている」「大人げない」などと陰口を叩かれたり、テレビ制作者からは「扱いづらい」「めんどくさい」などと思われたりする。村本はそんな現状への不満を募らせている。
社会問題について、タレントがテレビで何らかの主義主張を口にしたりすることは、基本的にタブー視されている。ただ、それは明らかにメディア側の自主規制である。余分なトラブルが起こることを避けたいだけなのだ。
村本が仕事で沖縄を訪れた際に、基地問題をネタにした漫才を披露したところ、大いに盛り上がった上に、ネタが終わった後で観客からの拍手が鳴り止まなくなったという。この経験から村本が学んだのは、社会的な問題の当事者こそが、それをネタにして笑い飛ばしてくれることを誰よりも望んでいる、ということだった。
それは、なぜアメリカではコメディアンが政治風刺ネタをやるのか、ということにも関係している。多くのアメリカ人にとっては、政治、人種、宗教が身近で切実な問題なのだ。だから、それを笑いのネタにすることが求められている。