このため、市は17年4月から2020年3月まで、3年間の期間限定で、原状回復をしなくても区画を変換できる“特例”を導入。「一般的に4平方メートルの区画で、墓石の撤去だけで20~30万円」(市の担当者)かかるという費用負担が免除されたことで、返還の申し込みが増えた。
担当者によると、17年12月、新たに墓園内に「合葬式墓地」(一つの墓に多くの遺骨を共同安置する形式の墓地)を整備したこともあり、一般墓地から合葬式墓地への改装を申し込む人も多かったという。区画返還の特例は期間限定だが、担当者は「一般墓地の需要状況により、延長も検討する」と話す。
明石市が、特例を設ける上で参考にした事例の一つが、東京都の取り組みだ。東京都は、都立の青山霊園と谷中霊園の再生事業で、使用墓所を返還する際、墓石の撤去工事と埋葬遺骨の取り上げを都が代行する特例制度を実施している。青山霊園では2013年度で申し込み受け付けを終了したが、谷中霊園は18年3月まで申し込みを受け付けている。
また、遺骨の改葬先として、同一霊園内の立体埋蔵施設や他の都立霊園の合葬式墓地を利用することができる。都の担当者によると、墓所返還の申し込みは、制度の開始以降、開始前の数倍に増えたという。
樹木葬や散骨など弔いの方法も変化する一方で、新たな墓を希望する人もまだまだ多い。また、「子どもや孫に墓守を引き継がせたくない」などの理由で「墓じまい」を考える人もいる。明石市の取り組みは、墓不足に悩む他の自治体のモデルケースとなり得るか。(ライター・南文枝)