高齢化による死亡者数の増加などで、墓不足や、墓を管理する「墓守」がいないまま放置される「無縁墓」が社会問題となっている。そんな中、兵庫県明石市が2017年4月から、市営墓園で全国的に珍しい取り組みを始めている。
その取り組みとは、市営墓園の使用区画を返還する際に義務となる、墓石撤去などの「原状回復」を免除する“特例”措置だ。明石市の担当者は「今年11月に行った募集では、いつもの年の2倍の50区画で申し込みを受け付けられました」と話し、早くも成果を挙げている。
兵庫県南部、明石海峡に面した人口約30万人の明石市は、「石ケ谷墓園」を運営している。墓園は1968年に完成。2017年現在、一般墓所は1万298区画が整備されている。面積に応じて約2平方メートルから12平方メートルまで6種類の区画があり、ほぼすべてが埋まっている。
市によると、開園以来、市民からの需要に応じて墓園を拡張してきたが、ある程度緑化する必要があるなど、敷地の問題でこれ以上区画を増やすのが難しい状態だという。このため、ここ数年は、他の場所に改葬するなどの理由で市に返還される区画を整備し、新たに使用者を募集していた。
しかし、使用区画の返還には、墓石撤去などの「原状回復」や「閉眼供養(魂抜き・性根抜き)」の法要など多額の費用がかかるため、返還されるのは年間20~30区画にとどまっていた。その一方で、民間の墓園よりも割安で、管理に安心感がある公営墓地を求める市民は多く、供給量が著しく不足。空き区画の募集倍率は平均で7倍、人気の約2平方メートル、約4平方メートルのタイプは10倍以上になることもあった。
2013年に行った市民アンケートでは、墓を所有していないと答えた市民のうち、半数以上が公営墓地を希望した。市側にも、墓守の不在で無縁墓となり、荒れ地になるのを防ぎたい、新たな募集を増やすことで墓園の老朽化対策のための維持・管理費用を捻出したいという悩みがあった。