6回表ソフトバンク1死、左飛に倒れた柳田を見つめる工藤監督(左) (c)朝日新聞社
6回表ソフトバンク1死、左飛に倒れた柳田を見つめる工藤監督(左) (c)朝日新聞社
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 横浜スタジアムのほぼ9割を埋め尽くすDeNAのファンの視線が、ソフトバンクの背番号「9」に注がれていた。

 彼らは、祈っていた。必死に念じていた。あの男だ。そう、ギータを止めるんだ―。

 身長188センチ。その大きな体で躍動し続けるソフトバンクの1番打者・柳田悠岐。日本シリーズ初戦、2戦目、3戦目とも、その柳田が主役を演じる全く同じようなシーンが、初回に必ず展開されていた。

 先頭の柳田が、ヒットで出塁する。

 2番の今宮健太が、送りバント。

 この1死二塁から、初戦と2戦目は、3番のアルフレド・デスパイネがタイムリー。3戦目はデスパイネが凡退して2死三塁となったが、4番の内川聖一がタイムリーを放った。

 つまり、1回に柳田が出塁して、本塁に生還。3試合連続で、初回に先制のホームを踏むのは、いつも柳田。そしてDeNAは3連敗。ならば、誰だって、こんな単純な結論を導き、そう思い込んでしまう。

『柳田が初回に出塁したら、ソフトバンクが勝つ』

 2017年日本シリーズの“あるある”になろうかとしているような『ギータの法則』。工藤公康監督も、その相手心理を踏まえた上で、先制点の重要性を強調した。

「先手はすごく大事だと思います。取れるときばっかりじゃないし、相手も当然、取られないように…ということも考えてくる。意識すればするほど、チャンスが生まれる可能性はある。そこをうまくモノにできるようにしていきたい」

 午後6時31分。プレーボールと同時に、背番号「9」が左打席に入る。ファウルは4球。ストライクと見れば、どんどん振ってくる。そのアグレッシブさは、柳田の恐ろしさでもある。カウント2ボール2ストライクからの7球目。DeNAの先発・浜口遥大の145キロのストレートを引っかけてしまい、打球は二塁の正面へ。柳田が一塁でアウトになった瞬間、横浜スタジアムのボルテージが一気に上がった。

「うぉー」「よっしゃー」「いいぞー」

 単なる内野ゴロだ。なのに、DeNAのファンはまるで優勝したかのような大歓声だ。柳田が止まった。今日は打ち取った。その一打が、単純に勝負に直結しているとは考えづらい。しかし、スタジアムのムードは明らかに変わった。

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