精神面を鍛えるため、後半はあえての過密日程にもした。
「(昨シーズンは)前年の失敗をふまえて、どうやったらうまくいくのかを考えて一年間やってきました。正解が見つかったわけではなく、同じ失敗をしないように気持ちをコントロールするように心がけた結果、世界選手権でかみあってよかったです」
“失敗”とは、初出場した2016年の世界選手権のこと。ミスが重なり、涙の7位。1位のハビエル・フェルナンデス(スペイン)、2位の羽生との差を痛感させられた。
「初めての世界選手権のときは、頑張らなきゃいけないという思いから追い込んで練習して、それが逆にプレッシャーになってしまった」
根っからの努力家で、負けず嫌い。その性格ゆえ、知らず知らずのうちに自分で自分を追い込んでしまっていた。
「疲れている時は休んで、100%が出せるような練習を続けた方が、ためになると感じました」
肩の力がすっと抜けたという。
宇野にとっては、楽しい気持ちでスケートに取り組めている時ほど、調子がいい。なかなか跳べなかったトリプルアクセルも、気分転換のつもりで跳び始めた4回転フリップも、「遊び心」を取り戻すと、成功した。
急成長を遂げた2016―17年。2度目の世界選手権ではSP、フリーの合計300点超えで初の銀メダル。前回は見上げる存在だった羽生と肩を並べて表彰台に上がった。
「迷ったら攻める」。昔から変わらないモットーだ。攻め続けることへの、怖さはないのだろうか。すると、迷わず答えた。
「守りに入るっていうのが何回かあり、それだと、逆に失敗が多かったんです。1、2年前から、どうせ失敗するなら、攻めようかなと考えるようになりました。やってみて失敗したのは練習が悪かったということ。でも、やらずしての“失敗”は、練習してきたことを無駄にしてしまう。怖さというよりも、後悔したくないから、攻め続けたいんです」
この考え方こそが、めまぐるしいスピードで一回りも二回りも大きくなった今を支えている。
「僕はあきらめが悪いので。自分が決めた目標を追い続けていきたい」
負ける度に、強くなる。人一倍強い勝利への執念。世界への頂点だけをまっすぐに見据えている。(朝日新聞スポーツ部・野田枝里子)
※アサヒオリジナル『フィギュアスケート2017-2018』インタビューより抜粋