現在ホームにいるのは犬8匹、9匹。そのうち、入居者が連れてきたのは犬、猫ともに3匹ずつ。それ以外は、ホームのペットとして飼われているのだ。

「設立時から、施設のペットとして犬と猫を迎えると決めていました。ペットと一緒に入居したい人だけでなく、高齢で犬や猫との暮らしをあきらめざるを得なかった方にここでもう一度、そんな日々を取り戻していただきたいと思ったからです」

■犬、猫と一緒にいることで向上するQOL

 ここでは、入居者が連れてきた犬猫と、施設の犬猫は区別されることなく各ユニット内を自由に歩きまわることができる。共有スペースはもちろん、各居室への出入りも自由だ。専用のベッドや循環式給水器も完備されている。

 リビングでくつろぐ入居者たちは、通りがかりの犬や猫をなでたり、くつろぐ猫やはしゃぐ犬たちを眺めて和んでいる。ごく自然に人と犬猫が共存しているその光景は、まるでペットのいる家庭の日常そのもの。入居者たちは「もう一度一緒に暮らせるなんて夢のよう」と顔をほころばせる。

「犬や猫と暮らすと感情が豊かになり、QOL(生活の質)が上がる、それが一番の効果ですね」

と若山さん。生活に張りが出る、ペットを触ることでリハビリになるなどのほか、認知症の進行を遅らせることにも効果を発揮する。

「ここで犬と触れ合ううちに犬の名前を覚え、忘れてしまっていたご家族の名前を思い出せた方もいたんですよ。みなさんここに入居すると見違えるように元気になるんです。ご家族は驚かれると同時に〝やっぱり〞と思われるようです。入居者のほとんどは以前、犬や猫とずっと一緒に暮らしてきた方なので、動物が常にそばにいる環境がどれだけ幸せをもたらすか、よくご存じだからでしょう」

■目指すのは、普通の暮らしをあきらめないこと

 夢のようなペット可ホームだが、犬や猫と暮らせることだけを重視しているわけではないと若山さん。

「うちの理念は“人生を楽しむことをあきらめない介護”なんです。高齢になると外出や旅行、買い物、入浴など、できないことが増えますが、ここではそれらを取り戻していただくための各種取り組みを行っています。海やいちご狩り、外食など近距離の外出は月1回、年に1度は旅行に行きます。地元のお店に来てもらって売店を開いたり、天ぷらを揚げてもらうなどの行事も頻繁に行っています。

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?
次のページ