不在でかえって存在感が浮き彫りになった長谷部(写真:getty Images)
不在でかえって存在感が浮き彫りになった長谷部(写真:getty Images)
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 ハリルホジッチ監督がチーム作りの“第三段階”と語るロシアワールドカップに向けた残り期間、そのスタートとなるニュージーランド戦では後半5分に大迫勇也のPKで先制。後半14分にクロスからFWクリス・ウッドに決められ同点とされたが、後半42分に倉田秋の代表初ゴールが決まり2-1の勝利を飾った。

 フィジカル的にタフな相手だったことは間違いないが、序盤に多くのチャンスを作りながらもことごとくシュートを外してしまうなど、日本としては自分たちから苦しい戦いにしてしまった部分もある。その一方で後半に投入された選手たちが攻撃に新たなギアを入れ、勝ち越しに結びつけたことはポジティブに考えていいだろう。

 だが、この試合では1つの問題が浮き彫りにもなった。本来のキャプテンである長谷部誠のゲームコントロール力だ。

 ボランチの選手を守備的か、攻撃的か、正確なパスを出せるか、といった形でタイプ分けすることが多いが、より重要なのはゲームコントロールを意識してプレーできるかどうか。長谷部はあえてカテゴライズするならば、それを得意としている選手だ。

 ニュージーランド戦で先発した山口蛍と井手口陽介は“ボールを奪える選手”であることを第一に評価されるが、決して守備的な選手というわけではない。むしろ機動力を生かした攻め上がりからミドルシュートや、時に決定的なパスを繰り出すこともできる。一方の長谷部はテンポ良くパスをつなぐことはできるが、特筆すべきパスセンスがあるわけでも、攻め上がった時の決め手があるわけでもない。

 その長谷部が“チームの心臓”とも言われるボランチのポジションで歴代の監督に信頼されるのは、キャプテンシーがあるからだけではない。試合の流れを見極め、状況に応じて攻守のバランスを調整できるからだ。

 攻撃に人数がかかり過ぎれば1つ落ちたポジションでサポートしながらリスクを管理し、チームとして必要以上に下がり過ぎれば仲間を鼓舞してラインの押し上げを促し、必要なら自らボールを縦に運んで攻撃のギアを上げる。

 ボランチのポジションから最終ラインや前線の選手に指示を出し、時に行動で示す彼のゲームコントロール力は、現在の日本代表で唯一無二のスペシャリティーとも言えるものになっているのだ。

 ニュージーランド戦に話を戻したい。試合の序盤はハリルホジッチ監督のスカウティングをベースとした準備が見事にはまり、中盤のさまざまなエリアにおいてフリーパスで高い位置に起点を作ることができた。大迫や武藤嘉紀のポストプレーが効果的だったこともあるが、あれだけ邪魔なくチャンスにつなげられるのはワールドカップのレベルではそうないことだろう。

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