昨年(2016年)秋、ニール・ヤングは、カリフォルニア州で開催された巨大フェスティバル「デザート・トリップ」に参加し、70代現役ロック・アーティストの一人として、あらためて強い存在感を示している。直後には、30年以上に渡って取り組んできたブリッジ・スクール・ベネフィット・コンサートを主催しているのだが、しかしそれ以降、公式な形ではまったくステージに立っていなかった。
今年はアーカイヴ作品の制作に集中するという話ではあったものの、4月にはロックンロール・ホール・オブ・フェイム授賞式への出席が突然キャンセルされ(パール・ジャムの音楽と功績について語る予定だった)、また、ブリッジ・コンサートも開催されず、「ひょっとすると健康に……」と心配していた人も少なくなかったようだ。
アメリカ時間9月16日、そのニール・ヤングがひさびさに大きなステージに立ち、力強くギターを弾き、歌う姿をYouTubeで観ることができた。それは、ペンシルベニア州ピッツバーグ郊外で開催されたファーム・エイド・ベネフィット・コンサートでのこと。ウィリー・ネルソン、ニール、ジョン・メレンキャンプ、シェリル・クロウ、ジャック・ジョンソンらが参加した約8時間にわたるイベントを、公式チャンネルがライヴ・ストリーミングで公開したのだ。
あらためて紹介しておくと、ファーム・エイドは、ウィリー、ニール、ジョンの3人が、1985年、アメリカの小規模農場を支援することを目的にスタートさせた組織。毎年秋に賛同するアーティストたちとともに大規模なコンサートを行ない、そこで得た収益によってさまざまな成果をあげてきた。その理念は、たとえば遺伝子組み換え作物を使用する大手コーヒー・チェーンへの痛烈な皮肉や石油パイプラインへの強い抗議など、ニールが音楽を通じて訴えてきたことと直接的につながるものでもあるのだ。
ニール・ヤングはそのコンサートの終盤、ウィリーの息子ルーカス・ネルソンを中心にしたプロミス・オブ・ザ・リアルと登場。「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」「コルテス・ザ・キラー」「ライク・ア・ハリケーン」などを中心にした45分のステージで、途中、「ハート・オブ・ゴールド/孤独の旅路」を含むアコースティック・セットも聞かせている。ヴォーカルに関しては高音部がやや辛そうだったが、愛器オールド・ブラック(レスポール)とマーティンD-28を抱えてステージに立つその姿、そしてそこから響いてくる音は、健在ぶりを示すものだった。要らぬ心配だったということか。ツアーを再開し、2003年以来ということになる日本公演を実現させてくれることを願うばかりだ。