モエレ沼公園のシンボル、ガラスのピラミッド(イサム・ノグチ/米国<モエレ沼公園>1982-2005)
モエレ沼公園のシンボル、ガラスのピラミッド(イサム・ノグチ/米国<モエレ沼公園>1982-2005)
市民がワークショップで加工した約100台の中古レコードプレーヤーが、ガラスのピラミッド内でこだまする大友良英+青山泰知+伊藤隆之/日本<(with)without records>2017
市民がワークショップで加工した約100台の中古レコードプレーヤーが、ガラスのピラミッド内でこだまする
大友良英+青山泰知+伊藤隆之/日本<(with)without records>2017
リタイアした消防車両に札幌の土と藁と水をこねてつくった薪窯を乗せた移動式薪窯「モバイルアースオーブン」
リタイアした消防車両に札幌の土と藁と水をこねてつくった薪窯を乗せた移動式薪窯「モバイルアースオーブン」
有島武郎旧邸
有島武郎旧邸
JR札幌駅コンコースの天井に飾られた大風呂敷フラッグは市民参加型プロジェクトから生まれた芸術祭のシンボル
JR札幌駅コンコースの天井に飾られた大風呂敷フラッグは市民参加型プロジェクトから生まれた芸術祭のシンボル

 今年の夏、旅に出るならイチオシなのが北海道、札幌です。3年に1度札幌で開催される、札幌国際芸術祭2017(通称:SIAF2017/サイアフ2017)が8月6日からスタート。10月1日までの57日間に渡り、札幌のまちなかを中心に周辺の観光スポットなどを会場にアートの祭典が開催され、アート作品が盛りだくさんなのです。北海道から沖縄、ハワイ、台湾など国内・海外8エリアを現地取材で撮り下ろした迫力の写真と最新の地元情報満載でお届けしている&TRAVEL編集部が、SIAFの見どころから、とっておきのプランを紹介します。

【SIAF2017 見どころを写真を写真で紹介!】

■注目のアートはどれ?
(1)モエレ沼公園
 札幌中心部から車で約30分。世界的な彫刻家として有名なイサム・ノグチが基本設計をした広大な公園です。ガラスのピラミッドとモエレ山は、目にしたことがある人も多いはず。今回は、このモエレ沼公園が6組のアーティストの舞台としてSIAF2017のシンボル的役割を果たしています。

 まず足を踏み入れたガラスのピラミッドでは、キーキーという不思議な音と勝手に回るたくさんのレコードプレーヤー、黄色い巨大なバルーンが出迎え、「何これ……?」と先制パンチを受けます。

 順路通りに進むと、今度は動かないロボットやはく製の狸を乗せたルンバ(?)に遭遇。他にも、最上階からレコードプレーヤーの奏でる音を聞いてみたり、黄色いバルーンの中を歩いてみたり、古びたレコードたちを眺めたり……。さらに屋上から眺めることができるモエレ山は、よーく目を凝らすと山の稜線に何かがずらりと並んでいるのがわかります。時間と体力のある方は、ぜひ登頂して絶景とともにこの作品の正体を確認してみてください。

(2)<芸術の森周辺×なんだこれ!?アート> これぞ北海道~な森をまるごと楽しむ
 次に訪れたいのが札幌中心部から南に車で約40分のところにある、札幌芸術の森。山と森林とアートを融合させたような、ときにエゾリスまで姿を現す緑に囲まれた癒しの場所です。ここでは札幌芸術の森美術館をスタートして、アート界の大御所と言われるクリスチャン・マークレーのさまざまな映像と使い古された携帯電話やパソコンなどを用いた作品を鑑賞。野外美術館内のあちこちに設置されたマークを頼りに自然の音に耳を澄ますポイントを巡る鈴木昭男の「点音」(おとだて)という作品も楽しめます。ちなみに、こちらの作品に用いられている耳をモチーフにしたイラストの刺繍バッヂは、今回追加生産が決まったほどの人気です。

 森のなかには、子どものアトリエや、ジブリの映画に出てきそうな有島武郎旧邸もあり、うっかりすると1日居てしまいそうなほど、居心地の良い空間です。

 ここまできたら見逃せないのが、芸森から徒歩10分ほどのところにある、札幌市立大学 芸術の森キャンパス。ここでは若手でアート界きって注目を集める毛利悠子氏の展示「そよぎまたはエコー」が。壊れたピアノと建物の構造そのものを使った大型展示を見て・聴いてみてください。

(3)<まちなか×イベント> まさに“神出鬼没プロジェクト”に巻き込まれてみる
 JR札幌駅コンコースの天井に大きく翻る布たち。こちらも実は市民たちが参加する「大風呂敷プロジェクト」のものです。ほかにもまちなかの様々な会場で常設展示が行われています。なかでも圧巻だったのが、札幌市資料館で展示されているの木彫り。200体を超える大小さまざまな熊の木彫りと次々に目が合います。懐かしいなーという思いと、こんなにいろいろな種類があったのか!という衝撃を受けるはず。

 こうした展示物だけでなく、ゲリラ的に札幌のまちなかでいろいろなイベントが巻き起こっているのも大きな特徴。イベントカレンダーに記載がなくても、急に開催が決まるイベントも多数あるのだとか。取材時も改造した消防車にピザを焼く薪窯を乗せた移動式薪窯(!)「モバイルアースオーブン」に遭遇したり、カフェ&イベントスペース「たべるとくらしの研究所」では「テニスコーツ」と大友良英氏とのゲリラライブが始まって大盛りあがりを見せるなど、とにかくアーティストとの距離も目線も近いのがSIAFなのです。

■食べるのだって芸術祭

「シメパフェ」って知ってますか? 札幌では、飲んだ後はラーメンもありだけれど、今は断然「夜パフェ」。たかがパフェとあなどるなかれ。ミルク王国北海道が作り出すパフェはアイスの濃厚さも見た目もまさに芸術的! 「札幌シメパフェ」推進委員会なるものも結成され、ただいま22店が加盟。中でも開催期間中は、芸術祭とコラボした限定パフェが登場MIRAI.ST cafe &kitchenの「大風呂敷パフェ」(950円)ほか、5店がエントリー。ほとんどの店舗が深夜0時前後まで営業しているのも、夜が早いと言われる札幌ではうれしい点です。

 さて、芸術祭もざっくりわかったところでどう回るか、それが問題。そこで、&TARVEL北海道的、「1泊2日で王道札幌と芸術祭、イイトコどりプラン」をご提案。

【1日目】
新千歳空港→JR札幌駅→モエレ沼公園「RE/PLAY/SCAPE」→JRタワープラニスホール「札幌デザイン開拓使」→テレビ塔や時計台、道庁などの大通公園周辺の観光名所めぐり→札幌大通地下ギャラリー 500m美術館「シュプールを追いかけて」→札幌市資料館街中ショッピング&カフェ→北専プラザ佐野ビル「札幌の三至宝」ほか→AGS6・3ビル「補間」(→)すすきのディナー&シメパフェ→藻岩山夜景

【2日目】
札幌朝市で海鮮丼→札幌芸術の森「NEW LIFE:リプレイのない展覧会」→札幌市立大学芸術の森キャンパス「そよぎ またはエコー」→JR札幌駅→新千歳空港

 今回、SIAF2017に参加して感じたのは、普段の観光だけでは絶対に味わうことのできない特別な出会いや体験ができることで“また会いに来よう”と思える場所になっていること。堅苦しく考えること自体がナンセンス!見て、食べて、ぜひ“なんだこりゃ!?”にたくさん出会ってください。(&TARVEL編集部)