このためスピードに難のあるマシュー・スピラノビッチに俊足FWの浅野をマッチアップさせたのは当然の策だった。前半、日本のDF陣やGKが相手FWのプレスを受けると、右サイドへのロングパスを選択した。地上戦でも酒井宏樹が果敢に攻め上がった。その結果、オーストラリアは左MFのブラッド・スミスや左FWのジェームズ・トロイージも守備のために帰陣を余儀なくされていた。

 先制点は左サイドの長友からのクロスから。オーストラリアDF陣はボールウオッチャーになっていたため、裏に抜け出した浅野は簡単にフリーになることができた。

 試合を決める追加点は意外にも21歳の井手口が奪った。本来はボール奪取能力を買われて山口とともにオーストラリアのミドルサードでのビルドアップを阻止するのが役割だったはず。しかし広い視野と正確なワンタッチプレーで、守備だけでなく攻撃でも貢献。原口元気からのパスを受けると、カットインから迷うことなくペナルティーエリア外で右足を振り抜いた。

 これまで日本代表を牽引してきたのは本田圭佑、岡崎慎司、長友らの北京五輪世代だった。しかし昨年6月のキリンカップでケガなどから本田や香川がベンチに座ると、その後に原口や山口、大迫らロンドン五輪世代が台頭してきて、やっと世代交代が進み出した。そして2017年に入ると久保裕也に加え、この日ゴールを決めた浅野や井手口など、リオ五輪世代が存在感を示した。

 ハリルホジッチ監督は「若い選手を信頼して使うべきだと思うし、それで成功を収めた」と胸を張った。最終予選の初戦、ホームのUAE戦では抜擢した大島僚太のミスなどで敗れたものの、さらに大事な局面で井手口をスタメンで起用した。論理的な裏付けがあったとしても、大胆な起用と言えるだろう。

 この日の結果、来年のワールドカップ本大会に向けて、日本代表のポジション争いが激化するのは言うまでもない。(サッカージャーナリスト・六川亨)

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