新鋭ズベレフに惨敗を喫した錦織圭(写真:getty Images)
新鋭ズベレフに惨敗を喫した錦織圭(写真:getty Images)

「彼、まだ18歳ですか? それは凄いですね」

 2年前……アレクサンダー・ズベレフの年齢を改めて確認した錦織圭は、素直に驚嘆と称賛の言葉を漏らした。ドミニク・ティエムやテーラー・フリッツら若手が一挙に台頭し、テニス界で「世代交代」の言葉が頻繁にささやかれ始めた頃。自らの背を追いかけてくるそれら若き馬群の中でも、錦織が「彼が一番凄い」と最も警戒心を深め、その成長を楽しみにしていたのが、爆発力がありながら弱点の少ない、198センチのズベレフだった。

 8月28日にニューヨークで開幕する全米オープンを最終地点とする、“全米オープンシリーズ”が幕を開けた。約1カ月半に及ぶその“北米ハードコート・ロード”の始まりの地に、錦織はワシントン開催のシティ・オープンを選んだ。昨年こそ五輪のために欠場したが、2年前には頂点に立った相性の良い大会。今季まだ優勝のない錦織は「良い思い出のあるこの大会で自信をつけたい」と、自身への期待を込めて言っていた。

 その戦いは、いきなり苦境からの始まりを強いられる。錦織にとっての初戦(1回戦はシードで免除)は、地元アメリカの人気選手ドナルド・ヤングとの対戦ということもあり、その日のメインイベントとも言えるセンターコートのナイトマッチに組まれた。しかし雨により開始は遅れ、勝利した時には、既に日付が変わっていた。

 中1日を挟んで迎えた3回戦の対フアンマルティン・デルポトロ戦も、やはりセンターコートのしんがりを務める一戦に選ばれ、そして再び雨で開始が遅れる深夜の戦いとなる。

 もっとも、パフォーマンスレベルで言えば、この日の錦織は今大会最高のプレーを披露した。相手に的を絞らせぬサービスと、左右に深く打ち分けるストロークで、デルポトロのパワーを封じて主導権を掌握。長い打ち合いやデュースを繰り返すゲームを取りきる、勝負強さを発揮した勝利でもあった。

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