ウォーキング=健康という考え方が一般的。でも「歩数を増やしても疲れるだけ」「歩いているのに病気になった」など、その効果について、疑問を抱いている人もいる。正しいウォーキングを実践するには適度な「強度」が大切だ。週刊朝日MOOK「家族で読む予防と備え すべてがわかる認知症2017」では、最新研究で認知症予防に効果があるとわかった方法を紹介する。
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健康寿命を延ばすためにウォーキングを日課にしている人も少なくありません。ただし……。
「誤った認識でウォーキングをおこなうと、かえって病気になったという人を大勢見てきました」
と、警鐘を鳴らすのは東京都健康長寿医療センター研究所の運動科学研究室長・青栁幸利さんです。
「まず、毎日1万歩以上歩いてさえいれば健康を維持できるという固定概念を改めましょう」
青栁さんは、群馬県中之条町に住む65歳以上の高齢者5千人を対象に、日常の身体活動(歩き)と病気予防の関係について大規模な調査研究を実施。15年以上続けておこなわれている「中之条研究」から、単に歩く(歩数)だけでは十分ではなく、歩く質(運動の強度)も重要である、ということがわかりました。なかでも中くらいの強度(中強度)がもっとも効果的だとか。
「1日平均の歩数と中強度の活動時間のバランスで、さまざまな病気にかかる割合が低くなることが説明できるようになったのです」(青栁さん)
そもそも運動強度とはエネルギー消費量の少ないほうから「低強度」「中強度」「高強度」の三つに分類されます。「低強度」は軽い家事やゆっくりとした散歩、「中強度」は速歩きのウォーキング、やや重い家事や山歩きなど、「高強度」はジョギングやテニス、水泳などに相当する運動です。
青栁さんの研究では、適度な歩数で、そのなかに速歩き(中強度)の時間が含まれていれば、多くの病気を予防できることが明らかになりました。