では、認知症予防のためには、毎日どれくらいの睡眠をとればいいのでしょうか? 睡眠時間を「6時間以下」「7時間」「8時間以上」の三つのグループに分けて、認知症発症リスクを調べた研究では、7時間の人に比べて6時間以下や8時間以上の人はリスクが高まるという結果が出ています。

「睡眠にはさまざまな役割がありますが、それを果たすには6~7時間の睡眠が必要でしょう」(内村医師)

 とはいえ、高齢になるほど不眠に悩む人は増えていきます。

「40歳を過ぎると、加齢現象で“眠る力”は衰え、睡眠時間は短く、眠りは浅くなります。つまり高齢になるほど自分で眠る力を養うことが必要なのです」(内村医師)

■毎日30分の昼寝で“こまぎれ睡眠”を防ぐ

 眠る力をつけるためにポイントとなるのが、睡眠時と覚醒時のメリハリをつけること。睡眠評価研究機構代表の白川修一郎さんはこう話します。

「年齢とともに、日中の覚醒を維持する機能が落ちてきて、昼間にうとうとしている時間が長くなりがちです。けれどもこうした“こまぎれ睡眠”は、脳の活動を停滞させ、夜の不眠や中途覚醒などをもたらすのです」

“こまぎれ睡眠”を防ぐために有効なのが、午後の決まった時間に30分程度の昼寝をすること。毎日30分程度昼寝をすると、認知症を予防できるという研究報告もあります。ただし、1時間以上の昼寝は逆に認知症の発症リスクを高めてしまうので注意しましょう。

 図は快眠のための理想的な一日の過ごし方をまとめたものです。朝起きたら光を浴びてからだを覚醒させ、午後昼寝をすることによって、その後の活動性が高まります。特に有酸素運動をすることで、夜間の睡眠が深くなります。

 また、夕方以降のカフェインを控え、水分はとりすぎないようにする、就寝3時間前には夕食をすませるといったことも、質のいい睡眠のカギ。アルコールは寝つきをよくする効果はありますが、中途覚醒しやすく睡眠の質が低下するので、夕食時にグラス1杯程度がのぞましいでしょう。

 年齢を重ねると夜間頻尿が不眠の原因になることも。アルコールや水分摂取に気をつけていても夜間に3回以上トイレで起きる人は、過活動膀胱(ぼうこう)や前立腺肥大の可能性もあります。その場合、泌尿器科で治療を受けることで改善し、眠りの質もよくなります。

「日中は光を浴びて明るい場所で過ごし、食事や睡眠は決まった時間にとって、規則正しい生活を送ることが大切です」(白川さん)

(取材・文/中寺暁子)

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