ワシントンにきている。主たる目的は、沖縄で進められている辺野古の基地建設に反対する沖縄の人々の声を伝えることである。私が事務局長を務める新外交イニシアティブ(ND)では過去3年の研究の成果を踏まえ、この2月に日本で「今こそ辺野古に代わる選択を -NDからの提言-」という報告書を発表した。これをワシントンにおいてもシンポジウムで発表し、また、連邦議会関係者や専門家を回って説明する、という行程である。
到着後、数日が経過したが、今回の訪問でまず若干驚いたのは、面談する相手が、沖縄の基地問題について程度の差はあれ一定の知識を持っていることが多くなったということである。例えば、数年前であれば、この問題について米議会を回っても、沖縄の場所を説明し、沖縄に基地の問題があることから伝えなければならなかったが、今回は多くの面談相手から、冒頭に「数ヶ月前に沖縄の人が来て話を聞いたから、概要は分かっているつもりだよ。アップデート情報を歓迎したい」との話がある。
翁長雄志沖縄県知事や稲嶺進名護市長、国会議員などの沖縄の方々がアメリカに渡り、連邦議員や安全保障の専門家に沖縄の状況を伝え、辺野古基地建設への懸念を伝えるという訪米活動がこの数年頻繁に行われている。私が、この問題についてワシントンで働きかけを始めて8年になるが、当初は沖縄の基地問題といってもカケラも知らないポリシーメーカーがほとんどであったことからすれば、実に大きな変化である。
もっとも、辺野古の工事が始まっている今、彼らに問題の詳細や沖縄の人々の苦悩を認識してもらうだけでなく、実際の変化を導き出さねばならず、そのためにはさらなる努力が必要であるとも感じている。
さて、今日お会いした民主党のあるリベラルな下院議員であるが、つい5、6年前に沖縄に行ったことがあるとのことであった。米議会の公式な企画として議員が海外視察に行くCODELという制度により、下院の軍事委員会の訪問団で沖縄を訪れたそうである。辺野古の基地建設現場もみたよ、と話すので「座り込みをしている人々にも話を聞いたのですか?」と聞くと、答えは「NO」。「そのような人たちは見かけなかった。話を聞くチャンスもなかった」との答えであった。