国宝「銅造釈迦如来像」(写真提供/浮岳山昌楽院 深大寺)
国宝「銅造釈迦如来像」(写真提供/浮岳山昌楽院 深大寺)
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鬼燈まつり(写真提供/浮岳山昌楽院 深大寺)
鬼燈まつり(写真提供/浮岳山昌楽院 深大寺)
深大寺・本堂(写真提供/浮岳山昌楽院 深大寺)
深大寺・本堂(写真提供/浮岳山昌楽院 深大寺)

 2017年6月1日現在の文化庁資料によれば、現在国宝に指定されている美術工芸品の彫刻は131件(複数体で指定の場合もあるので数にするとそれ以上)である。国宝彫刻の多くは仏像だが、その大半は関西に所蔵されており、奈良県の寺社だけで半数を超える国宝仏を所有している。一方、首都圏にある国宝仏像は鎌倉の大仏さまを含めて3件のみ。都内には、1967年に国宝指定を受けた大倉集古館(港区・施設改修工事のため2019年まで長期休館中)の「木造普賢菩薩騎象像」と、2017年に国宝指定を受けたばかりの深大寺(じんだいじ)の釈迦如来像の2体のみである。そこで今回は、国宝仏の写真と共に蕎麦の里としても知られる深大寺を紹介してみたい。

●都内で最も古いお寺のひとつ

 深大寺は調布市の地名ともなっているお寺で、733(天平5)年に満功上人が法相宗を得て創建、天台宗への改宗以降は主に厄除祈願の人気スポットとして知られている。

 深大寺一帯は豊富な湧水に囲まれ、現在でも深沙大王堂北側の清流や山門脇にある「不動の滝」、また境内だけでなく門前町や隣接する神代植物公園などの施設にもその恩恵が見て取れる。この名水が、深大寺の設立と密接に関わっているのではないかと考えられている。創建時に祀られたのは深沙大王(じんじゃだいおう)で、玄奘(げんじょう)三蔵が旅の途中の砂漠で、息絶えようとした時に現れ水を与えたとされている水神さまだ。われわれがよく知る架空のキャラクターで説明すると、「西遊記」に登場する沙悟浄にあたる。深大寺の名前は、この「深沙大王」からきていると言われている。

●厄除け大師としても関東随一の古刹

 豊かな水源を守ることは古来最も大事なことであり、京都・清水寺や目黒・目黒不動尊を例にとらずとも、水源に神仏を祀る場所は日本各地に点在するが、今でも豊かな水量を保っている場所はそう多くはない。この水が、深大寺そばを支える強い味方にもなっていた。

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