5月29日に退院し、在宅医療に切り替えた麻央さんは、おそらくはAさんと同様の痛みを抱えているのだろう。
麻央さんが「不安」というタイトルでエントリーした6月4日のブログでは、さらに発熱で何度も着替えなければならなかったことに触れ、こう綴った。
<子供達のいるリビングと、私の部屋では、まったく違う世界が繰り広げられていて、子供達がまだ小さいのでその両方を、同時に担っていかなければならない家族の大変さ、主人にはそこに仕事があるので、なおさらです>
それでも3日後の7日には、笑顔の写真をアップして、
<笑顔で写真を撮ることは、リハビリでもあります。ブログを書くことは私自身の励みになっています>
と記した。
私たちには想像もできない痛みと闘いながら、なお気丈にブログを更新する 原動力はなんだろうか。
まっすぐカメラに向ける澄んだ眼差しの先には、いつも家族がいる。幼いながらも母を気遣う息子と娘の存在は、何ものにも代えがたいはずだ。将来は梨園を支えることになる息子、同じ女性として幸せを願う娘の行く末を見守りたい 。少しでも長くわが子のそばにいたいという強い願い。さらに、愛する夫の、そして姉、両親から受ける細やかな愛情こそが、今の彼女にとって、がんと闘う免疫を活性化する最高の治療法なのだろう。
「一般に、入院である程度がんの症状コントロールができる状況でしたら、在宅医療でも症状コントロールが出来ることが多いです。また、動くこともつらく、動きが制限されている場合でも、在宅を望まれる患者さんがおられます。家で過ごせること、家族がずっとそばにいてくれることが、やはり何にも代えがたいからだと思います」(前出の医師)
(文/下平紀代子)