以前は、小さな子どもを持つ母親を死に至らしめる「マザーキラー」と呼ばれていた病、子宮頸がん。ところが最近では、性交渉開始の低年齢化や生活スタイルの欧米化などから、子どもを産む前の20~30代に発症するケースが増えてきた。
ある日、区から子宮頸がんの無料検診の通知が届いた東京都在住の主婦・藤田佑香さん(仮名・31歳)は、「せっかく無料なのだから」と気軽な気持ちで近所のレディースクリニックで検査を受けた。検査は長い綿棒のようなものを腹内に入れて、スッとこするだけで、ほんの2~3分で終了した。後日結果を開きにいくと、医師から「がんの初期病変が疑われます。通常ですと子宮を取ってしまったはうがいいかもしれませんが、一度大きな病院で精密検査を受けてみてはいかがですか」とすすめられた。
自覚症状もまったくなかった藤田さんは驚き、紹介された慶応義塾大学病院で精密検査を受けることにした。
検査の結果は、子宮頸部上皮内がんの0期。標準治療なら単純子宮全摘に相当するところだったが、「結婚したばかりで子どもを産みたい」という藤田さんの希望もあり、子宮口の一部を切り取る「円錐(えんすい)切除術」を実施した。完全切除ができたので、藤田さんはそのまま様子を見ながら妊娠・出産することができた。
昔のように子どもを産み終わった女性なら子宮を取ればいいが、現在はこれから出産年齢を迎える女性も多く、子宮を残したいと希望する人が増えている。妊娠できる能力を残しておくために慶応義塾大学病院で実施している手術は、【1】病変を焼く「レーザー蒸散術」、【2】頸部の一部を切除する「レーザー円錐切除術」、【3】頸部と周辺部分を切除する「広汎(こうはん)性子宮頸部摘出術」の三つだ。
※週刊朝日 2012年8月31日号