本田圭佑はちょっと変わった人だ。試合から1時間後、受動喫煙防止法案について政治的なツイートをする。そんな日本代表選手は見たことがない。
キャラクターが希少であるのは、ピッチ内のプレーにも言える。今回の招集メンバーのうち、左利きプレーヤーは本田ひとりだけ。これは戦術的に重要な意味がある。キリンチャレンジカップ2017のシリア戦は、後半に内容が好転した。それは相手の疲労だけでなく、本田のパフォーマンスも一因だ。
順に追っていこう。前半はシリアの仕上がりが予想以上に良く、日本が面食らってしまった。出足の速さ、球際の強さ、日本のプレッシャーをかわす落ち着き。両チームが同じ「4-3-3」システムでかみ合う中、日本はシリアの強度に飲み込まれてしまった。デュエル(1対1の球際)を標榜するチームのはずが、なんという体たらく。
特に前半7分に香川真司が左肩を脱臼し、倉田秋に代わってからは、中盤が前へ行くことをためらい、攻撃の形ができなかった。シリアはそれほど前からボールを追わず、コンパクトなブロックを作って待ち構えており、センターバックの吉田麻也と昌子源は余裕でボールを持てる状態。さらにアンカーには山口蛍もいる。この状態でインサイドハーフの倉田や今野泰幸まで引いてしまうため、日本は後ろがだぶつき、縦パスを入れた後、その次の展開につながらなかった。
唯一の希望は、窒息しそうな中盤を飛び越えて1トップの大迫勇也につける縦パスだったが、中盤が低い位置に引いてしまうため、大迫がボールを収めた後のサポートが遅い。それでもキープ力のある大迫は、さすがと唸らせるプレーを連発したが、それ以上に苦戦させられたのが右ウイングの久保裕也だ。
ハリルホジッチ監督からは「前へ行け」と指示されていたが、中盤やサイドバックが上がって来ない状況で、前へ前へと、気がはやっても孤立するだけ。しかも、これまでに何度も見せてきた裏のスペースを陥れる久保の一発の飛び出しは、完全にシリアに警戒されている。試合の状況が久保に足元でパスを受けることを要求してきたわけだが……。
これが、まったくうまくいかない。キープできず、かなりボールロストが目立った。