最近では、性交渉開始の低年齢化や生活スタイルの欧米化などから、子どもを産む前の20~30代に発症するケースが増えてきた子宮頸がん。日本婦人科腫瘍学会の治療ガイドライン作りに携わり、ライフワークの一つとして子宮頸がんの検診推進に取り組む本大学医学部付属病院産科・婦人科教授の片渕秀隆医師に、子宮頸がんの最近の傾向と予防について聞いた。

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 子宮頸がんの発症は、多くの場合、性交渉によるHPVの感染がきっかけとなります。HPVは6割以上の男性の亀頭、陰茎、陰嚢(いんのう)、肛門、尿などにごく普通にいるウイルスで、コンドームでは完全には感染を予防できません。性交渉の経験のある女性なら、一度はHPVに感染したことがあると思ってもよいほどです。しかも、感染したHPVは通常数カ月で自然に体外に排除されてしまいます。つまり、ウイルスに感染しただけではがんにならず、HPV感染が持続する環境にあることが発がんを招く一因となります。HPVの感染から発症までには5年から10年ほどかかります。最近では10代で性交渉を経験することも増えているため、20~30代の罹患(りかん)率が急激に高くなってきました。

 晩婚・晩産の傾向のなかで、妊娠かと受診するとがんが見つかるという悲劇も少なからずあるのです。

 2009年から日本でもHPVに対するワクチン接種が始まり、若い世代の接種率が確実に増加しています。ワクチンで予防はできますが、感染したHPVを排除することはできません。

 ワクチン接種に加え、20歳以上になったら1~2年に1回の子宮頸がん検診も必要ですし、できるなら性交渉を経験した年齢から始めることが理想的です。

※週刊朝日 2012年8月31日号