「点が取れているというのは、それだけチャンスを作れているのかなと。チャンスをもらっているのかなという気がします」
相手の個のレベルやチームのインテンシティーがスイスより上がった分、味方のサポートも上がっており、また久保のクオリティーを発揮しやすい環境とも言える。加入した当初のサイドハーフから「4‐2‐3‐1」のトップ下、さらには「3‐4‐2‐1」のシャドーと配置が換わってきているが、長身のカリファ・クリバリをターゲットマンとした攻撃の中で積極的にボールを受け、チャンスメークからフィニッシュまで絡む。
メヘレン戦(3月12日)の“4人抜き”ゴールも前線から引いてサイドからパスを引き出し、そこからバイタルエリアまでボールを運んで勝負するという姿勢が象徴的に表れたシーンだった。4月17日のシャルルロワ戦ではクリバリの落としから仕掛けてマーカーをかわし、左足でゴールを決めている。虎視眈々と機会を狙うというよりは、精力的に攻撃に関わりながらチャンスと見れば個人で仕掛けてシュートに持ち込む。
そうした意識を久保自身も強く持ち、攻撃の方向性を味方と共有できていることがゴール量産につながっているのだろう。特にキックだけでなくボールタッチも左右で器用に扱える久保にとって、プレーの選択肢が増えることはより本来の持ち味を発揮しやすいことを意味する。ヤングボーイズ時代から見せていた裏を狙う意識が失われたわけではないが、全体的なレベルが上がっているはずのベルギーでむしろプレーの幅が広がっていることは興味深い。
ベルギーは全体的なレベルが高いだけでなく、若いタレントが多く、スイス以上に欧州のスカウトから常に注目されるリーグであることも、久保が欧州挑戦における二番目の地として選択した理由の1つだろう。その優勝を争うクラブにすんなりと適応し、結果を残し続ける久保には間違いなく“5大リーグ”のスカウト網にかかってくるはず。
すぐにステップアップの道を選択するのか、欧州カップ戦の出場が濃厚なヘントに残って“W杯イヤー”に備えるかは久保とクラブの決断次第だ。1つ言えるのは久保がさらに上のステージに挑戦できる資質をベルギーで示しており、そこでさらなる進化を見せる可能性があるということだ。(文・河治良幸)