2016年に発売されて以来、シリーズ累計で25万部以上も売れている職業図鑑がある――「なんで?」と思われるかもしれない。職業図鑑というと固く、とっつきにくいイメージ。本が売れない昨今の市況を差っ引いても、これほどの売上を記録するのは異例なことだ。
その名も『日本の給料&職業図鑑』シリーズ(宝島社)。他の職業本とどう違うのだろう。
例えば「薬剤師」の項目。ページを開くとまず目に飛び込んでくるのは、大きな杖を持ち、まるで魔法使いのようなローブをまとった女性のイラストだ。職業の紹介文には「街角の白魔道士」とある。それ以外にも社会福祉士は背中に白い翼が生えた青い服の男性のイラストで「ジェネラストエンジェル」、自動車学校教官は進入禁止のマークを魔法で出している男性のイラストで「ドライブマニュピレイター」など。世の中の職業をファンタジー風の味付けで紹介しているのが特徴だ。
この切り口が反響を呼んだ。就職を控えた学生だけでなく、ゲームやアニメに親しんだ人々や子どもを持つ主婦層など、幅広い読者を獲得。16年1月に第一段が発売されると、7月には「日本の給料&職業図鑑 Plus」、17年3月には「女子の給料&職業図鑑」と続編が登場し、売れに売れている。
なぜこのような本を作ろうとしたのか。著者の山田コンペーさんに話を聞くと、“色モノ企画”の枠に収まらない、「職業」に対する熱い想いが見えてきた。
●「仕事ってほんとはカッコいい」
「就職に悩んでいる人に向けて、何か助けになれないかという思いがこの本の出発点でした」
そう語る山田さん自身、かつて職探しで苦労した経験があったという。
「僕は20代後半まで役者などをしながらぶらぶらしてました。ある時、転職を考えたのですが、改めて職探しを始めてみると世の中にはどんな仕事があって、どんな業務内容で、どれくらいお給料がもらえるのか、すごくわかりづらいことに気付いたんです」