来季、フィギュア日本女子は、2018年に開かれる平昌五輪の出場枠「2」を巡って熾烈な戦いを繰り広げる。エースの宮原知子(19)が左足股関節の疲労骨折のため欠場した世界選手権では、樋口新葉(16)と三原舞依(17)という初出場の若い二人と、繰り上がりで出場した本郷理華(20)に五輪の枠取りへの“重圧”がのしかかった。
その不在でエースとしての存在感を改めて感じさせた宮原は、豊富な練習量に支えられた安定感が持ち味だ。ジャンプの回転不足という課題もこつこつと努力することで乗り越え、表現力にも磨きをかけ、氷上では普段のシャイな素顔とは違う堂々とした姿をみせるようになってきた。けがさえ完治すれば、平昌五輪代表の最有力候補であることは間違いない。
一方、樋口と三原にとって、初出場の世界選手権で五輪の出場枠を意識せざるを得なかったことは酷だった。しかし、プレッシャーの中での演技は彼女たちにとって貴重な経験となっただろう。二人は今季最後の試合となる国別対抗戦にも出場する。樋口は公式練習でトリプルアクセルに挑み着氷、意欲的な姿勢をみせている。今季シニアデビューした樋口は、表現面に力を入れ大人の滑りもできるようになってきているが、もともとの持ち味は豪快なジャンプだ。樋口特有の勢いのある滑りがみせられれば、平昌への道も見えてくる。
また、三原は難病で滑ることができなかった時期を乗り越え、今季素晴らしい活躍をみせた。伸びのあるスケーティングと癖のないジャンプを持つが、基礎がしっかりと身に着いた本格的なスケーターで、確かな実力が今季の躍進につながった。受け答えもしっかりし、落ち着いた振る舞いができる彼女には、五輪代表に値する風格がそなわっている。
急きょ出場が決まった世界選手権で精いっぱいの滑りをみせた本郷は、今季はけがもあり本来の力が発揮できたとは言い難い。経験や実績もあり、万全な状態で臨めば五輪出場を勝ち取る力を持っている。
さらに昨季の世界ジュニア女王・本田真凜(15)が、来季はシニアに上がってくる。苦しんだ試合もあった今季だが、最後の世界ジュニアでは銀メダルを獲得し、確かな実力を証明してみせた。華やかなスター性を兼ね備えた本田は、既にシニアでも通用する表現力を身に付けており、シニア一年目でいきなり五輪代表となっても不思議ではない。
一時代を築いた浅田真央が引退した今、強い日本女子の歴史を受け継いで平昌のリンクに立つのは、誰になるのだろうか。(文・沢田聡子)