オススメの京都の桜の楽しみ方とは…
オススメの京都の桜の楽しみ方とは…

 日本全国どこにでも桜が咲き、花見ができるのだとしても、京都のそれは格別。春の盛り、京都は花見客で埋まる。けれども、桜の時期、人気スポットに集中するため、円山公園、嵐山、清水寺、高台寺、平野神社あたりは大混雑。「前を歩く人の背中ばかり見ていた」という笑い話にもならない声をしばしば耳にする。とはいえ、「それでも、京都で桜が見たい!」。

 できる人たちが、こっそり行く桜の名所を、生粋の京都人であり、歯科医師、かつ作家で、『できる人の「京都」術』の著者でもある柏井壽氏にきいてみた。

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「できる人」たちが、京都の桜を愉しむさいには、「場所」と「時間」をずらします。まずは、「場所」をずらしてご紹介しましょう。

 名所を避けてのおすすめは洛中の小さな寺。たとえば智恵光院の上立売を西に入ったところにある「雨宝院(うほういん)」。<西陣聖天宮>という別名を持つ小さな寺の境内に、珍しい品種の桜が咲き乱れる様は圧巻です。

 あるいは「本法寺(ほんぽうじ)」。表と裏、両千家が並ぶ小川通にあって、由緒正しき寺。<十(つなし)の庭>など見どころも多い寺だが、京都人には、広い境内に点在する桜でもよく知られています。

 本阿弥光悦、長谷川等伯などの文人ゆかりの寺では、境内のあちこちに桜の花がかれんな姿を見せ、とりわけ多宝塔を背景にする桜は、一幅の絵のような美しさを際立たせます。

 次は「時間」をずらします。

 以前に、花鳥画を得意とする日本画の大家、上村 淳之氏に桜の愉しみ方を尋ねたことがあります。「場所はともかく、ライトアップの桜は絶対に避けるべきだ」という言葉が上村氏の口から真っ先に出てきました。

「夜間にライトアップをせん、水辺の桜がよろしい。ただし朝一番やないとあかん。夜はゆっくり休んで、さぁこれから咲くで、と言うとる桜を見つけなさい」

 この言葉を肝に銘じて、「朝一番」の「水辺」の桜をおすすめします。

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