「酒井高はクラブ(ハンブルガーSV)では守備的な役割だが、代表ではボールリカバリーと後ろからのビルドアップを組み合わせた。山口には攻撃的な役割を期待したが、前半は恐れながらプレーしていた。初めての組み合わせなので、ハイレベルなプレーはできなかった」

 後半になると、森重と吉田は、酒井高と山口にほとんどパスを出さなかった。森重と吉田、そして長友の3人でパスをつなぎながら、前線へのロングフィードに切り替えていた。そんなプレーを見ていて、機能していないボランチ2人のうちのどちらかをベンチに下げ、倉田か本田を起用した方がいいのではないかと思ったほどだ。

 試合後、森重に前後半でプレーを変えたのは自らの判断なのか、尋ねてみた。

「前半は持ち上がっても(パスを)出すところがなく、引っ掛かっていたし、(ボールを)運ぶことで受け手のスペースを消していた。後半は長友をサイドに張らして組み立てるよう工夫した。最終手段で、理想ではなかった」(森重)

 試合中に、悪ければ悪いなりに修正できるベテランならではのプレーだが、これも“ポジティブな収穫”と言っていいだろう。

 そして“ネガティブな収穫”もある。酒井高に攻撃のビルドアップを期待するのは難しいことが判明したことだ。同じく山口も、前線で岡崎や久保がマークを外してフリーになっても、スパッとタテパスを入れることができない。ハリルホジッチ監督が指摘したように、インターセプトを恐れていたのかもしれないが、ビルドアップには物足りなさを感じた。山口にはトライする勇気を持ってほしかったが、この2人でのユニットは機能しないことが分かったのも、ネガティブであるが“収穫”と言える。

 次の試合は6月13日にイランで行われるイラク戦で、この試合に勝てばW杯出場にリーチのかかる可能性がある。もしもイラク戦に長谷部や今野、高萩が間に合わないようなら、ハリルホジッチ監督は攻撃を組み立てられるボランチを新たに探さなければならない。

 最後にもう1つ、森重のコメントを紹介しておこう。

「いまはいろんな選手が試合に出ていますけど、それはチームにとって理想であるし、結果を出さないといけないけど、結果も出ているのはポジティブなこと。あとはもっとコンビネーションをよくしていかないといけないし、ボール回しもゴール前まで運べるようにしないといけない」

 悪いなら悪いなりに結果を残せたことも収穫ということだ。(現地取材=サッカージャーリスト・六川亨)