大腸がんの手術をおこなう高橋医師ら(都立駒込病院)
大腸がんの手術をおこなう高橋医師ら(都立駒込病院)
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 高齢者(75歳以上)へのがん手術には科学的根拠がなく、現場の医師の判断に委ねられている──。週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院2017」では、「高齢者のがん手術」と題して、各病院の判断基準や実情を取材している。今回は特別に、がんの中でもっとも年間罹患者数が多い大腸がんについて紹介する。

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 全国7位の年間333例(14年)の大腸がん手術を実施する都立駒込病院の大腸外科部長、高橋慶一医師を取材した。同院には、高齢者が多く通院していて、患者の2割弱は80歳以上だ。

「大腸がんに限れば、高齢者の年齢のみをみて手術しないというのは古い話です。現在は、年齢が高くても全身状態がいいのなら、標準的な手術をおこないます。ADL(日常生活動作)や持病(併存症)の有無を評価して、全身状態がいいことを前提にすれば、術後の大腸がんだけの生存率は高齢者と高齢者以外とで差がないと思います」(高橋医師)

 同院の01年から13年までの大腸がん手術3182例を、75歳以上と75歳未満で比較してもらった。結果、他病死を除いた大腸がんだけの術後5年生存率では、75歳以上が90.1%、75歳未満が91.4%とほぼ差がなかった。一方、他病死を含めた術後5年生存率では、75歳以上が75.4%、75歳未満が87.5%となった。高齢者のほうが12ポイントも落ちていた。

 手術に関係なくもともとの持病によるものの影響が大きいとみられる。ただし、手術関連死が主たる原因とは考えにくいが、手術が引き金となって起きる免疫力の低下や術後合併症などの影響の可能性は考えられるという。

 高橋医師はこう話す。

「年齢が高くなればなるほど他病死の割合が増えると思います。高齢者の場合は、術後合併症の管理が重要で、3割の患者さんには何らかの術後合併症が出ます。多いのは、せん妄と肺炎です。そのため術前評価をきちんとして、不測の事態に備えることが大切です」

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