
J2が開幕する今日2月26日、カズこと三浦知良が50回目の誕生日を迎える。選手寿命が長くなったとはいえ、50歳というのは信じられない年齢だ。
カズはなぜ、これほど長く第一線でプレーできるのか。
これについては、ストイック、不屈、負けず嫌い、あきらめないといった道徳的な言葉で語られることが多い。考えてみれば、40歳を過ぎたころから、カズは世間でも自己啓発の模範のような存在となった。
だが、カズの本質は違う。模範というより、むしろ「遊び人」に近いだろう。
彼がサッカーを続けているのは、夢をあきらめないことの素晴らしさを伝えたいためではない。好きで好きで仕方がないサッカーでメシが食えるのが、純粋に楽しくて仕方がないからだ。その気持ちは、ピッチでの嬉しそうな表情にも表われている。永遠のサッカー小僧という言葉がふさわしい。
Jリーグが日本中に根づき、いまでは54チームに膨れ上がったが、カズほど楽しそうにサッカーをする選手は見当たらない。それはサッカーでメシを食うことが当たり前になり、大観衆の前でプレーする喜びが希薄になってしまったからだろう。
「日本では好きなサッカーでメシが食えない。それならブラジルに行ってしまえ!」
そうやって国を飛び出したカズとは、喜びの深さが違うのだ。
Jリーグの先駆者であるカズは、文字通り身体を張って道を切り拓いてきた。ひとりでも多くのファンを獲得しようと、タッチライン際で跨ぎフェイントを見せ、ピッチ外でも華のある振る舞いを忘れなかった。バルーンの中から真っ赤なスーツを着て登場した、第1回JリーグアウォーズのMVP発表のシーンは、いまも語り草だ。こうやってファンを増やしてこなかったら、50歳の大ベテランがプレーする場所はあったかどうか。
カズといえば大舞台での強さでも知られる。それもまた、ファンの期待に応えるのが本物のプロだということがわかっているからだ。ファンの期待に正面から向き合い、全力で応えようとしてきたからこそ、数々の印象深いゴールが生まれた。
記憶にも新しいのが、大阪長居で行なわれた2011年3月29日の震災復興支援チャリティマッチだ。途中出場したカズは日本代表を相手に痛快なゴールを決めてカズダンスまで踊り、世間の喝采を一身に浴びた。美味しいところをひとりで持って行ってしまった。
50歳の誕生日に迎える開幕戦。チケットは完売。舞台は整った。
「出られるのならゴールを狙いたい」と語るカズが、またもや世間を驚かせるかもしれない。(文・熊崎敬)