打撃練習をする中日・ゲレーロ(c)朝日新聞社
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 昨季、4年連続Bクラス、そして19年ぶりとなる屈辱の最下位に終わった中日。確執も取り沙汰された谷繁元信監督、落合博満GMの両者が球団を去り、森繁和監督とともに心機一転でチーム再建を誓う。

 問題は戦力が伴うかどうか。第一の課題は先発投手陣。かつての投手王国も、昨季2ケタ勝利を挙げた投手は0人。左の大野雄大、右の吉見一起の両輪に2015年に10勝を挙げた若松駿太、来日3年目となるバルデスの4人に加え、高卒2年目の小笠原慎之介が結果を残せるか。起爆剤になり得るのは、大卒即戦力ルーキーの柳裕也だ。ストレートの球速自体は平均して140キロ前半ほどだが、スピンの効いたボールにはキレがあり、抜群の制球力と多彩な変化球を駆使した投球術が魅力。完成度の高さは今年の新人随一で、明るく誰からも好かれ、大学時代に主将を務めたリーダシップも併せ持つ。まずは他球団の持つデータが少ない1年目で2ケタ勝利は挙げてもらいたい。

 リリーフ陣には多士済々の面々が揃う。右は又吉克樹、福谷浩司(又吉、福谷は先発転向も示唆されている)、祖父江大輔、左は岡田俊哉、小川龍也、新外国人のアラウホ。そして抑えには“タジ魔神”こと田島慎二が控え、昨季の救援防御率はリーグトップの3.04を誇った。この豊富なコマを用い、かつての「浅尾拓也&岩瀬仁紀」のように絶対的な勝ちパターンを再び作れるかどうか。浅尾、岩瀬の両投手の復活も含め、シーズンの早い段階で役割を固めたいところだ。

 チーム浮上への最大の課題は、昨季リーグ最少得点、最少本塁打だった打線にある。FA流出も取り沙汰された大島洋平、平田良介の主力2人が揃って残留したことは何よりの朗報だが、それでも昨季のままでは苦しい。まずは好不調の波が激しかったビシエドが再び爆発すること。そして故障するまでの昨年4月に覚醒の兆しを見せた高橋周平が独り立ちすること。福田永将、堂上直倫のさらなる成長と、新人の京田陽太のブレイク、春季キャンプで評価を高めている2年目スラッガー・石岡諒太の台頭も必要になってくる。

 新戦力の中で大きなカギを握るのが、2015年にドジャースで11本塁打を放ったキューバ出身の新外国人・ゲレーロだ。春季キャンプ開始直後から鋭いスイングを披露し、2月12日の韓国・ハンファとの練習試合ではいきなりの2本塁打を放った。この新大砲が、開幕後も期待通りの働きを見せて、平田、ビシエドとともにクリーンアップを結成できれば打線の破壊力は一気に増す。

 もちろん課題は少なくない。正捕手問題は依然として解決し切れておらず、前述した戦力も皮算用の部分が多い。だが、森新監督のほか、土井正博打撃コーチ、森脇浩司、奈良原浩内野守備走塁コーチ、田村藤夫バッテリーコーチと首脳陣も様変わりし、近年とは異なるムードがチーム内にはある。このムードをチームの上昇へ繋げられるか。昨季からの変化という意味では、森ドラゴンズが最も大きな振れ幅を持っている。