中村(高知)は40年ぶり2度目のセンバツ出場となる。40年前は部員12人ながら山沖之彦投手(元阪急など)を擁して準優勝を果たし、“24の瞳”と呼ばれる旋風を巻き起こした。OBでもある横山真哉監督が2015年に復帰すると、昨年春は県大会ベスト4、夏は準優勝と着実に結果を残し、秋は見事に優勝を果たした。しかも決勝戦を戦った相手は夏の高知県大会7連覇中で、昨年夏の甲子園でもベスト4に進出した明徳義塾であり、確かなチーム力がなければ勝てる相手ではない。その後に行われた四国大会では初戦で惜しくも延長戦の末に英明(香川)に敗れたものの、四国でも指折りの実力を持っていることは間違いないだろう。チームの大黒柱はエースの北原野空投手(3年)。明徳義塾を完封した安定感のある投球と旧チームから中軸に座る力強い打撃は要注目だ。
多治見(岐阜)は2003年秋にも県大会ベスト4に進出し、21世紀枠の県推薦校となった実績を持つ。ここ数年は安定した成績を残しており、昨年秋も岐阜県大会で見事初優勝を飾るなど不来方、中村にも引けを取らない成績を残した。長打は少ないものの、足を使える選手が多く県大会の準決勝では9回裏に4点差をひっくり返して逆転勝利をおさめるなど、集中力のある打線が持ち味。特に3番に座る加藤将輝中堅手(3年)は俊足巧打の外野手で、秋の公式戦ではチームトップの5盗塁と5割近い打率をマークしている。河内京太(3年)、奥村康平(3年)、中里宇杏(3年)の3投手はいずれも防御率1点台と安定した投手を複数抱えているのも強みだ。
前述した通り賛否両論ある21世紀枠だが、選ばれたチーム、選手にとってはチャンス以外の何物でもない。小川泰弘投手(成章→創価大→ヤクルト)は2008年のセンバツに21世紀枠で出場して好投したことから大学進学の道が開け、今ではヤクルトのエースと呼ばれるまでに成長している。今大会に出場する3校からも小川投手のように大舞台での経験を生かして、大きく成長を遂げる選手が出現することを期待したい。(文・西尾典文)