21世紀枠での選抜高校野球出場が決まり、喜ぶ岐阜県立多治見高校の選手たち(c)朝日新聞社
21世紀枠での選抜高校野球出場が決まり、喜ぶ岐阜県立多治見高校の選手たち(c)朝日新聞社
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 2001年の第73回大会から設けられたセンバツ高校野球の21世紀枠。困難な環境を克服したこと、地域貢献で他校の模範となったこと、文武両道などといった勝敗以外の要素から出場校が選出されている。

 秋季大会の成績に関しては都道府県大会のベスト16以上、加盟校が129校以上の都道府県はベスト32以上が対象という基準が設けられているが、一般選考で選ばれた学校に比べると当然実力が劣るケースが多い。第73回大会から昨年の第88回大会までで合計42校が出場しているが、初戦を突破できたのはわずか13校。過去5年間に限ると2013年の遠軽と昨年の釜石は初戦が21世紀枠同士の対戦であり、純粋に初戦を勝ち上がったのは2015年に出場した松山東だけである。21世紀枠で出場した高校が勝ち上がるのがいかに難しいかが分かるデータと言えるだろう。

 また、21世紀枠で出場した42校の中でその後の春夏の甲子園に出場したのは宜野座(沖縄)、鵡川(南北海道)、利府(宮城)、華陵(山口)、彦根東(滋賀)、山形中央(山形)、土佐(高知)の7校だけである。21世紀枠として出場した高校がその年の夏の甲子園に出場したケースは2001年の宜野座と2010年の山形中央だけ。このことからも改めて21世紀枠でセンバツ出場を果たした高校の実力不足をうかがい知ることができる。一般選考枠を減らしてまで選出する意味があるのかといった否定的な意見が聞かれることも少なくないが、今大会の選考についてはそんな風潮を意識してか、比較的実力のある3校が選ばれたという印象だ。

 まず部員10人ということで大きな注目を集めている不来方(岩手)だが、1988年創立と学校の歴史は浅いものの2012年夏にはベスト4に進出するなど近年力をつけてきている新興チームだ。昨秋は岩手県大会で準優勝を果たすと、東北大会の初戦でも甲子園常連校である八戸学院光星(青森)を相手に0対2と善戦する見事な戦いぶりを見せた。旧チームからエースを務める小比類巻圭汰投手(3年)は粘り強い投球が持ち味で、秋の公式戦9試合で6失策と守りも堅い。87年センバツの大成(和歌山)と並び甲子園最小部員数タイ記録となる10人での戦いとなるが、観衆を味方につけるプラス要素となることも十分に考えられるだろう。

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