下位から中堅レベルの大学の試合機会が減るとともに、日本選手権の大学枠がなくなれば、大学トップクラスが更に上のレベルに挑戦する機会も失われることになる。現在開催中の大学選手権で8連覇を目指す王者・帝京大学の岩出雅之監督は、日本選手権の制度改革の報道に対して、「日本選手権は学生の成長を助ける大事な存在。大きな柱をひとつ失う気がする」と話したと報じられている。大学ラグビーは、将来の日本ラグビーを担う世代。本来ならより一層の強化施策が求められるはずだが、試合機会が減らされる一方というのが現状だ。

 また、今回の日本選手権の大学出場枠撤廃の動きの背景にある「スーパーラグビーを最優先するための国内シーズンの短縮と試合数の減少」という流れは、日本ラグビーの屋台骨であるトップリーグにもあとあと影響するのではないだろうか。

 今シーズンのトップリーグで11戦全勝の首位(11節終了時点)と絶好調のヤマハ発動機ジュビロが最初にタイトルをつかんだのが、2014年度の日本選手権だった。トップリーグではプレーオフ決勝で敗れて準優勝。しかし、日本選手権を勝ち上がり、見事に栄冠を手にしている。トップリーグから日本選手権決勝まで、ヤマハ発動機がこのシーズンに戦ったのは18試合だった。一方、ヤマハ発動機同様に11戦全勝で今シーズンのトップリーグ2位につけているサントリーサンゴリアスは、ヤマハ発動機が日本一になった時の決勝の相手だった。ただし、その歩みは対照的。サントリーはトップリーグでは不振でプレーオフにも進めず。ワイルドカードトーナメントを経て日本選手権の出場権を得て、1回戦から戦って決勝まで進んだ。決勝はこのシーズンの20試合目だった。

 道のりは違えど、8月23日のトップリーグ初戦から翌年2月28日の日本選手権決勝まで半年間に及ぶ長くタフなシーズンを戦い抜いた経験が、今シーズンの両チームの好調の土台なのではないか。それは試合に出ていた選手だけでなく、コーチ、スタッフも含めたクラブ全体のレベルアップにつながったはずだ。

 サンウルブズに参加する選手はたかだか40名程度。トップリーグ全体から見れば、10分の1にも満たない。一部のトップ選手のスーパーラグビー参戦のために、国内シーズン全体を縮小させることが、2019年の先まで見据えた時に果たして得策かどうか。大きな疑問が残る改革が進められようとしている。

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