小さくても痛~い口内炎。ところが、痛くなく、2週間程度過ぎてもよくならない口内炎は、舌がんの可能性があるという。舌がんを含む口腔(こうくう)がんの撲滅委員会発起人で、この12月17日には「オーラルケア・フォーラム2016」にも登壇する東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座の柴原孝彦教授に、早期発見のためのセルフチェック法を取材した。
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都内のホテルに勤務するリホさん(当時37歳・仮名)は、セレブな客と接する機会も多く、美意識が高い。歯科医院に数カ月ごとに通って、定期的にクリーニングやメンテナンスを受けてきた。
2014年の5月頃、かかりつけの歯科医師がリホさんの舌の裏側に赤と白のポツポツとした斑点を発見。痛みなどの自覚症状はなく、歯科医師に指摘されるまで気づかなかった。2週間後の再診時でもポツポツは消えず、歯科医師は口腔外科のある東京歯科大学千葉病院を紹介。同院の柴原教授が検査した結果、初期の舌がんと診断された。
「舌がんをはじめとする初期の口腔がんは口内炎と見間違われやすいのですが、口内炎のように痛い、しみるなどの症状がないことが多いのです」と柴原教授はいう。
そうなると、頼みの綱は歯科検診だが、口腔内をくまなくチェックしてくれる歯科医師は少ないのが現状だそうだ。というのも、虫歯や歯周病の治療と違い、口腔粘膜を隅々までチェックをしても診療報酬の対象にならないことが、原因のひとつとみられる。