シニカルなコメントの多い指揮官からすれば、最大級の賛辞と言っていい。「私の要求したポジション」とは、ペナルティボックス内のプレーを指す。その中で大迫は、1点目は戦術眼の高さを、2点目ではスキルの高さを発揮してゴールを陥れた。1点目は左サイドの清武のクロスに対してファーサイドに流れて、ボール保持者とゴールの位置、そしてGKやDFの状況を把握できるポジショニングからヘッドで決めた。

 2点目は清武のスルーパスを、ゴールに背を向けていたものの身体を開きながら右足で受けて反転し、左足で切り返してマーカーを抜き去り右足で決めた。流れるような動きと左右両足のダブルタッチによる鮮やかなゴールだった。

 後半に入るとまず岡崎とFW浅野拓磨(シュトゥットガルト)を起用。この時はまだ4-2-3-1だったが、71分にA代表デビューとなるFW久保裕也(ヤングボーイズ)を投入すると、4-4-2にシステムを変更。岡崎と久保の2トップで、右にスピーディーな浅野、左にドリブラーの齋藤と、4トップにもなる攻撃的な布陣を採用した。

 これは試合前日に岡崎が「今まで1トップの形でやってきて、一つのフォーメーションではなかなか崩し切れないこともある。基本的に1トップのイメージだが、世界やアジアの強い相手になったらそれでやっていくのは大変なので、2トップにしないと難しい。自分は1トップでも、トップ下で衛星的に動くこともできるので、2人のコンビネーションで崩すのが日本の良さでもあると思う」と話していたことを実践した格好だ。

 ハリルホジッチ監督も「最後はタテ関係の2トップをやってみた」と認めたように、強豪国との対戦では攻撃のオプションを増やそうとしている。しかし、試合途中で久保と浅野のポジションを入れ替えるなど試行錯誤したものの、即席の2トップは機能したとは言えなかった。

 4日後のサウジアラビア戦では、右足首痛のMF香川真司(ドルトムント)や、体調不良でオマーン戦はメンバー外となったDF長友佑都(インテル)が戻って来るのか。最終予選の行方を占う大事な一戦であり、負けることは許されない試合であると同時に、長年見慣れた代表メンバーの顔ぶれにも何らかの変化が起きる、ターニングポイントとなる試合になるかもしれない。(文=サッカージャーナリスト・六川亨)

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