とはいえ、ポルトガル人指揮官は、イブラヒモヴィッチやポール・ポグバ、エリック・バイリーら希望の新戦力を獲得し、自らの手で骨格部分を固めてもいる。夏の補強費は総額1億5700万ポンド(約201億円)。覇権奪還への期待は当然のように高まっていた。

 だが現時点で、モウリーニョ監督はチームの最適解を見出だせていない。顕著なのは中盤だろう。限界説も囁かれるウェイン・ルーニーを先発メンバーから外したり、推進力の高いドリブル突破を得意とするポール・ポグバをトップ下で起用したりしているが、「ベストの布陣とセレクションを見つけられていない」(元チェルシーコーチのレイ・ウィルキンス氏)との声は的を射ている。

 開幕直後はイブラヒモヴィッチの「個の力」に助けられることも多く、チーム全体で連動した攻撃を奏でることは少なかった。そのスウェーデン人FWが調子を落とし始めたタイミングで、ユナイテッドが白星から見放されるようになったのは、決して偶然ではないだろう。

 また、マネージメントにも疑問符がつく。「ミステリー」(英紙『デイリー・テレグラフ』)との指摘があるように、優先順位の落ちるリーグカップでも起用しない新戦力ヘンリク・ムヒタリアンの出場時間はわずか104分。しかも、W杯優勝経験のあるMFバスティアン・シュヴァイシュタイガーを戦力外とし、練習にも参加させてこなかった。1軍トレーニングへの参加を認めたとの最新情報もあるが、自らの手法、戦術にこだわりすぎるあまり、柔軟性を欠いているように思えてならない。

 チェルシー一次政権(優勝)、インテル(優勝)、レアル・マドリード(2位)、チェルシー二次政権(3位)と、いずれも就任初年度で好成績を収めてきたモウリーニョ監督。豪華な陣容を揃えているだけに、これから上昇曲線を描いてく可能性は十分あるが、10節を終えた現時点で言えば、苦戦を強いられている。

 ここからマンチェスターUをどう立て直していくか。ポルトガル人指揮官の手綱さばきに注目したい。(文・田嶋コウスケ)