全豪では21位のエカテリナ・スビトリーナを撃破。全仏では36位のエレナ・オスタペンコ破った上で、3回戦では6位のシモナ・ハレプとフルセットの熱戦を演じた。全米でも初戦で30位のココ・バンダウェイを退けると、3回戦では地元アメリカの9位マディソン・キーズ相手に、勝利まであと2ポイントに迫った末の惜敗。これらの戦績が、大坂が「ビッグゲームに強い」と呼ばれる所以であり、近い将来トップ10を狙いうる逸材だと、誰もが認める理由である。

「どうして、グランドスラムに強いのか?」

 それは重ねる勝利数に比例して、聞かれる頻度も増す問いだ。大坂の試合後の会見室には、常に開催国の地元記者や、アメリカ、イギリスなど主に英語圏の取材者たちも顔を並べる。日本語以上に英語を流暢に語る日米ハーフの18歳は、そのたびに「心のどこかで、これは凄く大切な大会だと思っているからかしら?」と、小首を傾げつつ小さな声で答え、はにかんだ笑みを浮かべるのが常だ。コート上で見せる豪胆なプレーとあまりにかけ離れたその姿は、時に微笑ましく、時にミステリアスに見る者たちの目に映る。

 大舞台に強い大坂の“勝負師の資質”は、世界にその名をセンセーショナルに轟かせた、16歳の頃に既に見て取ることができた。2年前の7月、まだランキング400位台だった大坂は、当時の世界19位にして2011年全米優勝者のサマンサ・ストーサーを、フルセットの大接戦の末に下したのである。驚くべきは、世界的に全く無名の16歳が、初めて立つWTAツアー大会のセンターコートで考えていたこと。

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