だが、そうは言いつつ私たちはマツコを、いわゆる「オネエタレント」とはとらえていないのではないか。そこにマツコ・デラックスというタレントの不思議さがある。

 つまりマツコは、社会的なマイノリティに属していながら、テレビにおけるもっともメジャーでポピュラーな存在であるのだ。現在の日本で、このマイノリティとマジョリティの重なり、接近はいったい何を意味するのか?

 この連載では、マツコの魅力にさまざまな角度から迫るとともに、マツコのような存在を求める「時代」とはどんなものなのか、についても考えていきたいと思っている。

 では、前置きはこのくらいにして本題に入っていくことにしよう。第一回目の今回は、マツコの「時代感覚」に光を当ててみよう。

■溶鉱炉の炎

 マツコ・デラックスは博識な人だ。

『マツコの知らない世界』(TBSテレビ系)では、冷凍食品について意外な知識を披露してゲストの専門家を驚かせる。また、『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)では、首都圏の鉄道沿線ごとの街や住民の特徴を詳らかに語ってみせる。対応できない分野はないのではないかと思わせてしまうくらい、その知識は幅広い。

 そしてどれも、本やネットで学んだ知識というよりは経験に裏付けられた知識であり、だからこそ面白い。

 街歩き番組『夜の巷を徘徊する』(テレビ朝日系)は、そんなマツコならではの博識ぶりが堪能できる番組でもある。毎回、マツコがどこかの街や場所をぶらぶら歩きながら、路上、店舗、酒場などで出会った人々と交流する。道すがら、マツコがふと語る街や人の印象が、確かな知識と観察眼に裏付けられていて感心させられることも多い。

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