ワウリンカに逆転負けを喫し、2年ぶりの決勝進出を逃した錦織圭。(写真:Getty Images)
ワウリンカに逆転負けを喫し、2年ぶりの決勝進出を逃した錦織圭。(写真:Getty Images)

 その選手は、「当たっている時の彼は、世界最強」と言われている。そして錦織圭にとっては不幸なことに、この試合の彼は(特に第2セット中盤以降は)、世界最強モードであった。

 錦織の2年ぶりとなる全米オープン決勝進出の希望は、“野獣”のニックネームも持つ世界ランク3位のスタン・ワウリンカ(スイス)に6-4、5-7、4-6、2-6で阻まれた。

 第1セットの錦織のプレーは、完璧とも言える内容だった。ファーストサーブの確率が高い。コースも良くスピードも出るので、快調に自分のゲームがキープできる。そのサービスゲームの好調さがプレー全体にも伝播するかのように、ストロークの伸びも良い。スピンをかけた高く弾むショットでワウリンカをコート後方に押しやっては、狙い澄ましたドロップショットで次々とポイントを重ねていく。第5ゲームをブレークした錦織が、ほぼノーミスで第1セットを奪い去った。

 第2セットも、錦織優勢の流れは続く。最初のゲームをブレークすると、続く自分のサービスゲームでもストロークで相手を圧倒。このまま錦織が、試合を支配するかに見えた。

 だがその流れは、些細な1つのプレーで風向きを変える。第4ゲームで錦織が犯した、1つのダブルフォルト。この時点では、この1ポイントが大きな意味を持つようには、とても見えなかった。しかし、ダブルフォルトを機にミスが増えた錦織がこのゲームを落とすと、途端にワウリンカのスイッチが入った。

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