まさに萩野の作戦勝ちだった。以前の日本記録のときは、得意の背泳ぎのラップタイムが1分00秒99。しかし、今回の背泳ぎは1分02秒16。これが意味するところは、得意な種目だからこそ、ここで効果的に力を温存できたのである。
その結果、後半だけで1秒98も自己記録を伸ばしている。大舞台でも冷静に自分の思い通りのレースを展開した萩野は、幾度となくチャレンジしながらも、その度に瀬戸というライバルに阻まれてきた世界チャンピオンの座を、ようやく勝ち取った。
「最後競っていたので、最後までキックを打って踏ん張りました。本当に、勝てて良かったです。本当にいろいろあったけど、平井伯昌コーチにメダルをかけてあげたい一心で泳ぎました」(萩野公介)
瀬戸は「ちょっと疲れちゃいました」と苦笑いを浮かべる。4分09秒71と、予選から記録を落としてしまったが初五輪の舞台で堂々の銅メダルを獲得。1956年メルボルン五輪以来となる、日本人のダブル表彰台が実現した。
「素直な気持ちを言えば、めちゃくちゃ悔しいです。最高峰の舞台で、最高のライバルたちと勝負して、そこでまだ自分は甘いんだ、と教えられました。200mバタフライもありますし、次も頑張ります」(瀬戸大也)