さらに、10時発だと関東圏以外の人びとは前泊が必要なこともあった。11時発だと、札幌・千歳空港からでも7時半のフライトに乗れば10時10分頃に竹芝桟橋に到着することができる。現地の出港も今までの午後2時から午後3時30分となり、最終日も山や海を楽しんだ後に船に乗ることができるのだ。

 船内はどう変わったかというと、設備やデザイン、居住性などが格段にアップした。特に交通バリアフリー法にもとづいて、エレベーターが設置され、廊下も広くなっているのが印象的だ。車いすを利用する乗船者が利用しやすい船室の設置も以前にはなかったものだ。また、レストランや売店ではSuicaなどの電子マネーが使えるようになった。

 船室は、以前最も席数が多かった2等和室(広いフロアに一人ずつの毛布が敷かれた雑魚寝形式)は新船にもあるが、顔の部分にとなり席との間仕切りがつくようになった。そして、同じぐらいの席数で、2等寝台が設置されているのに注目したい。上下二段ベッドが向かい合わせになっており、カーテンで仕切れば個室感覚で使用できる。値段も和室と数千円しか違わない。

 ほかに1区画にベッドが2名分の特2等寝台。シングルベッド2つが置かれたホテルタイプの一等。バス(湯船あり)トイレ、冷蔵庫、空気清浄機も設置された特一等があり、最高ランクはキングサイズベッドに特一等の設備に加え、ドリンクサーバー、専用デッキ、専用ラウンジもある特等である。
 特等になると、ちょっとしたシティホテル以上の居住性があり、24時間の船旅を快適に過ごせること請け合いである。

 24時間の船旅を経ないとたどり着けないのは国内では小笠原だけ。船の24時間はゆっくりと小笠原へと心と体をシフトしてくれる。だからこそ、船のこのグレードアップはうれしい。この夏はぜひ新おがさわら丸で小笠原を目指したい。(島ライター 有川美紀子)

※料金など詳細は小笠原海運のHPでご確認ください。