歯周病は、中年以降の日本人では80%がかかっている病気だ。初期は目立った症状がなく、ゆっくり進行するため、「静かな病気(サイレント・ディジーズ)」とも呼ばれ、日本人が歯を失う最も大きな原因となっている。
しかし安心してほしい。歯周病は正しい知識さえあれば防ぐことができる病気なのだ。それなのに、世の中には歯周病の専門家から見て、首をかしげたくなるような不正確な情報が蔓延(まんえん)しているという。
そこで、歯周病の原因・治療・予防についての研究や歯科医師の教育を行っている日本歯周病学会と、日本臨床歯周病学会が全面的に協力し、歯周病に関する“正しい”知識の普及を目的とした初の書籍、『日本人はこうして歯を失っていく 専門医が教える歯周病の怖さと正しい治し方』(朝日新聞出版)を発売。本書から特別に、歯のケアに対する6つの誤解と正解を紹介する。
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【誤解その1】高機能な電動歯ブラシを使っているからケアは完璧だ
<正解 使い方を間違えれば無用の長物に>
近年は、電動歯ブラシを使用してブラッシングをする人が増えています。
各メーカーの電動歯ブラシに搭載されている、汚れをかき出し歯周病の原因となる汚れを落とす技術は、歯科医師も目を見張るほど。しかし、電動歯ブラシを使用している患者さんの口の中を診てみると、きちんと磨けていないことがとても多いのです。
電動歯ブラシが代わりにやってくれるのは、ブラシを小刻みに動かす作業だけ。磨きたい位置まで歯ブラシを移動させる作業は、患者さん本人がやらなければなりません。磨きたい部分にしっかりブラシを当てることができなければ、電動歯ブラシはせっかくの機能を発揮することができないのです。
【誤解その2】歯磨き剤や洗口液で歯周病が治せる
<正解 予防効果は期待できても、治せる歯磨き剤はない>
ドラッグストアの店頭には、歯周病予防を謳う歯磨き剤や洗口液が並んでいます。こうした商品の広告には、歯肉からの出血や歯肉の腫れ、口臭といった言葉が頻繁に登場し、歯周病に効果があるように思う人も多いでしょう。実際、こうした症状を歯磨き剤や洗口液でなんとか抑えよう、あるいは治そうとしている人はたくさんいます。
パッケージに「歯周病予防」と明記している歯磨き剤や洗口液の場合、予防効果はある程度期待できます。しかし「歯周病を治す」とはどこにも書いていないはずです。歯周病を完全に防いだり治したりできる夢のような歯磨き剤や洗口液はありません。歯科医院を受診してください。